言葉…06

 彼に抱かれ慣れた身体は快感に従順過ぎて、その上快感を期待してしまって、本当にどうしようも無い。
「…高遠、」
 熱の篭もった声で呼ぶと、高遠は理解したように少し身体を離して、慎重な手付きで僕の服の釦を外し始めた。
 曝け出された肌に何度も口付けが落とされて、背筋が震える。
「高遠…そこはいいから…ねぇ、早く…」
 高遠の指が乳頭に触れた途端、僕は身を捩って拒んだ。
 窮屈な下腹を早く解放して欲しくて、ねだるように腰を押し付けると、高遠はごくりと喉を鳴らした。
 ほんの数秒だけ此方をじっと見据えた後、彼はすぐに身体をずらす。
 高遠が興奮していることは、手に取るように分かる。
 早く僕を目茶苦茶にしたい癖に懸命に欲望を押し殺して、いつものように慎重に服を脱がしてゆくその姿は、ひどくそそられる。
 ジーンズを取り去り、続いて下着をゆっくりと脱がし終えると彼は僕の足を開き、その間へ身を沈めて微かに目を細めた。
 以前は高遠のその仕種が恐かったけれど、今となってはそれさえも魅力的なものに思えてしまって、僕は堪らずに彼を呼ぶ。
 すると彼は薄く笑って短い返事を零し、すぐさま下腹部へ顔を近付けた。
「真夏さん、もうこんなに濡れていますよ…すごく、可愛らしい」
 嬉しそうに囁いて、高遠は僕のそれを口に含んだ。
 ゆっくりと根元まで咥え込むと、彼の顔が何度か上下する。
 高遠が何の躊躇い無くそれを口で愛撫してくれる様を、僕は目を閉じることなく見つめ続けた。
「ん…っあ、あ…ッ」
 一度唇を離し、今度は根元からゆっくりと、舐め上げて来る。
 滑らかに唇が動き、上下し、くびれを舌先でなぞってゆく姿は官能をひどく擽った。
 甘く痺れるような快感が心地好すぎて、簡単に理性を失ってしまいそうで、僕は咄嗟に手を伸ばして高遠の髪を緩く掴んだ。
「高遠…やだ」
「真夏さん?どうされました、」
 息を弾ませ、少し掠れた声で告げると、高遠は一度動きを止めた。
 怪訝そうに此方を窺っている彼の表情を見ると、多少優越感が込み上げて来る。
「やだから、早くやめて。…言う通りにしてくれないと、嫌いになるよ」
「ですが…」
 物言いたげに、高遠の視線が僕の雄へと向けられた。
 こう云う時の高遠は、まるでお預けを食らった犬みたいで、可愛くも思える。

「服、全部脱いで横になって」
 零れそうな笑いを押し殺して高遠にじっと視線を注ぐと、彼は渋々身体を離し、云う通りにスーツを脱ぎ始めた。
 高級なブランド物だと云うのに無造作に上着を脱ぎ捨て、ネクタイを解き、ワイシャツを脱ぎ捨てる。
 均整の取れた筋肉質な体躯を眼にして、鼓動が速まった。
 黙って見届けていると、全裸になった高遠は僕の言いつけ通りにベッド上へ横になる。
 指示を待つように此方へ視線を向ける彼に近付き、その身体を跨いで腹上へ腰を下ろした。
「ねぇ高遠、僕に見下ろされるのって…どんな気分?」
「真夏さんですから、腹は立ちませんよ」
 余裕そうにゆったりと微笑む高遠に、少しむっとした。
 彼に見上げられると僕はひどく興奮するのに、高遠は違うのかと考えると、悔しくて堪らない。
 余裕を無くしてやろうと考えて手を後ろへ動かし、高遠の雄に触れる。
 意外にも、それは既に硬くなり、そそり立っていた。
「高遠、勃ってる…」
「真夏さんを前にして、興奮せずには居られませんからね」
 雄をやんわりと握り込んで扱き始めてやると、彼は心地好さそうに吐息を零した。
 好きな人が僕の手で感じてくれるのは、正直嬉しい。
 一瞬、口元が緩み掛けてしまいそうになったけれど、何とかそれを堪えて腰を浮かせ
 高遠の雄を手で支えると、込み上げて来る羞恥心を押し殺しながら、双丘を押し付ける。
「真夏、さん…」
 はっとしたように名を呼ぶ高遠を一度見下ろしてから、僕は何も告げず、雄々しいそれに谷間をすり寄せて腰を揺らし始めた。
 何度も抱かれ慣れた所為で、後ろの方がより一層感じるようになった今では
 入り口を彼のモノで擦られるだけでも、甘い快感が背筋を走り抜けてゆく。
 淡く息を吐くと、高遠は僕の頬へ片手を添え、唇をなぞりだした。

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