言葉…07

「どうしたんです、真夏さん。今日は、やけに積極的ですが……何か、有りましたか?」
 怪訝そうに尋ねられたけれど、僕は答える代わりに薄く唇を開く。
 すると、すぐさま高遠の指が口腔へ滑り込んで来た。
「は…っん、ぅ…」
 彼の指が慎重に蠢いて、僕の舌を擽る。
 応えるように指を強く吸ってやると、途端に彼の眉が顰められた。
 けれどそれは不機嫌になっている訳じゃ無く、僕の中に今直ぐ突っ込みたい衝動を堪えているから、そんな顔をするんだと云うことを僕は分かっている。
 さっきはあんなにも余裕たっぷりに微笑んでいたのに………今は、僕の方が立場が上だ。
 それが嬉しくて堪らず、彼の表情に胸を熱くさせながら、指を少し強めに咬んでやる。
 高遠の顔が少し歪んだけれど、怒り出す気配は無い。
 彼が怒った時の……あの、変化する口調も低い声も好きで堪らない僕は
 たまに彼を怒らせようとするけれど、全く上手くいかない。
 内心で舌打ちを零して腰の動きを止め、一度指を舐めてから顔を少し引くと、高遠は素直に指を抜き去った。

「…ねぇ、僕ってそんなに魅力が有る?そんなに、欲情する?」
「ええ。それはもう…すごく。……馬鹿らしいかも知れませんが、もうどうしようも無いぐらいに貴方が欲しくて、仕方ないんです」
 真っ直ぐな双眸で見上げられて、ぞくぞくした。
 火照った身体の奥が、ひどく疼いて、堪らない。

 ………そんな風に言われたら、舞い上がって、調子に乗ってしまう。

 昔、僕を置いて行った男が
 今、僕をこんなにも強く求めているんだと思うと――――とことん、焦らしてやりたくなる。
 これ以上無いってぐらいに焦らして、僕をもっと、求めさせたくなる。

 唾液で濡れた指を丁寧に舐め始めた高遠を見下ろしながら、僕は再度腰を浮かせた。
 少し後ろへ下がって、今度は自分の性器を、彼の雄へ押し付ける。
 ずれないように手で支えながら腰を動かし、色も大きさも形さえも違う彼のソレへ、自身を擦り付けた。
「ま…真夏さん、」
 ごくりと喉を鳴らした高遠が、まるで我慢出来無いとでも云うように、上体を起こして来る。
 だけど、僕はそれを許さなかった。
「……んっ、だ…駄目、寝てて…」
「し、しかし…」
「駄目。言うこと聞けないなら、嫌いになる」
 不機嫌な表情を作って強い口調で言ってやると、高遠の顔が一瞬強張った。
 僕に嫌われることを何よりも恐れている男は、起こした上体を素直に倒し、言いつけをきちんと守る。
 本家の人間からも一目置かれているような、冷酷で暴力的なヤクザのこの男が
 こんな、魅力なんて何一つ無い未成年のガキに夢中だなんて、滑稽すぎる。

 込み上げそうな笑いを押し殺しながら、僕は擦り合わせた性器へ視線を向けた。
 先端の窪みから溢れ出した蜜の所為で、お互いのソレはぐっしょりと濡れていて、ひどくいやらしい。
 ぬめりを帯びた感覚があまりにも気持ち好すぎて、肌が粟立った。
「あ…っん、…ねぇ…っ高遠の…凄いよ、気持ち好い…」
 息を弾ませながら煽ってやると、高遠は眉根を寄せた。
 男らしいその表情に、僕の欲も煽られる。

 身体の奥が疼き始めて我慢出来ず、ヘッドボードを目で差すと高遠は理解したように片手を伸ばし、小引き出しを開けて中から不透明なボトルを取り出した。
 蓋を開けたのを目にして、僕はすぐさま、彼の好きにさせない為にボトルを奪い取る。
 一度動きを止めてボトルに片手を近付け、自分の指にたっぷりと潤滑液を絡めると、再び腰を動かした。
 敏感な亀頭を擦り付けるように上手く腰を回しながら、蕾へ指を這わせる。
 液体のお陰ですんなりと自分の中指が侵入したものだから、僕は抑え切れずに二本目をすぐに埋没させた。
「…高、遠……はぁ…あ、高遠…ッ」
 甘えるように名を呼ぶと、高遠の表情は苦しそうなものに変わる。
 顔を顰めて此方を見上げている高遠が、愛しくて堪らない。

「真夏…さん、」
 我慢出来ないと云った様子で彼は切羽詰った声音を放つと、手を動かして双丘を撫でさすり、勝手に指を挿入してしまう。
 まだ僕の指が入っている内部へと、彼の太い指が潜り込んで来る。
「高遠…だ、め…抜い、て…っあぁ…!」
 腰の動きを一度止めて抜くように注意するものの、奥まで侵入して来た指が、僕の一番感じる箇所を突いたものだから
 鋭い快感が走り抜けて、全身が大きく震えた。
 咄嗟にかぶりを振って駄目だと訴えると、高遠は指を抜くどころか、ゆっくりと上体を起こして喉奥で笑う。

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