ただいま…04
「知るかよ、歳の所為じゃねーの?」
「違うよ。弘人以外に、欲情しなくなっちゃったみたいなんだ」
「嘘くせぇ…」
どうしよう?とか弱々しい声で尋ねられても、知った事じゃない。
試しに、秘書にずっとしゃぶらせて居たけれど、全然充たされないんだ……なんて言われた時には、流石にムッとしたけど。
「だから今日はね、とことんパパに付き合ってもらうからね」
「…結局はそれが云いたかったのかよ」
呆れたように言ってやると、和浩はその整った顔には似合わない苦笑を浮かべた。
コイツは、こんな風にじゃなくて、もっと楽しそうに…嬉しそうに笑っている方が良い。
真剣な表情も捨てがたいけれど、嬉しそうに笑った顔が一番だ。
「父さん…早くしろよ…」
その首に腕を絡めて引き寄せて、男の唇に軽くキスをして、コイツの一番好きな呼び方で呼んでやると、その顔は一瞬だけ驚きの表情を浮かべた。
けれど、直ぐに嬉しそうな色を浮かべて、にっこりと笑った。
こう云う時、コイツは本当に俺を好いているんだと思える。
緩やかだった動きは次第に、普段情けないこの男とは思えない程、荒々しい突き上げに変わってゆく。
男が内部を擦り上げる感覚が気持ち好過ぎて、頭の奥が愉悦で痺れてしまいそうだ。
「んっ…ぅっ、あぁっあ…ッ」
何処でそんな事を覚えたんだってぐらいに、巧みに腰をグラインドさせて、的確に良い所を突かれて…
俺だけ快がってるのが何だか悔しくなって、和浩の耳を軽く咬んでやる。
途端に、男の肩が少し跳ね、俺は調子に乗って耳朶を舐め始めた。
「弘人…もっとパパに甘えて良いんだよ…」
嬉しそうに囁かれて、俺からは和浩の顔は見れないけれど……
きっと、俺の大好きな笑顔を浮かべているんだろう。
和浩は俺の脚を肩に担いで、より深く繋がるように身体を倒して来る。
「ふっ…んぅ…く、ぁ…あっあ…ッ」
まるで和浩の腹と自分の腹に挟まれるように自身が擦れて、頭の中が次第に真っ白になる。
グチュグチュと結合部から響く水音が、あまりにも淫らに感じて、興奮は更に強まるばかりで……。
「弘人、弘人…」
夢中になって俺の名前を呼んで、和浩は奥を勢い良く強引に突き上げては、先端ギリギリまで抜いてゆく。
強い刺激が堪らなくて、俺は自ら腰を振り、和浩の耳へ吸い付くようにキスをした。
「く…っあぁッ、あ…カ、ズヒロ…っも、イク…!」
「いいよ弘人…すごく、いい…」
息を乱しながら押し殺すように低い声で囁かれて、和浩は素早く先端ギリギリまでモノを抜き……
「――――愛しているよ、」
俺の首筋に顔を押し付けてきつく吸い付きながら、とびっきりの甘い声でそう囁いて、一気に最奥を貫かれる。
「っひ、ぅ…あぁぁ―…ッ」
一瞬で目の前が真っ白になって、俺は和浩にしがみついたままで身体を震わせ、まるで泣き叫ぶような声を高らかに上げて吐精した。
内壁が収縮して、中の和浩をキツク締め付ける。
すると、内部のそれは膨張して脈打ち、その次の瞬間、熱い液体が奥をぐっしょりと濡らした。
俺の首筋に顔を押し付けている男の、熱く乱れている息がくすぐったい。
余韻に浸りながら、ゆっくりと和浩の頭を撫で、その髪を梳く。
……………コイツが、一番欲しがっている言葉を掛けてやろう。
そう考えると、口元が自然と緩んだ。
あの言葉を云った時の、コイツの喜びようといったら……思い出しただけで、行為後の倦怠感なんて吹き飛びそうだ。
『愛してる』でも『好き』でも無い言葉。
和浩は、俺がその言葉を言ってくれる瞬間が、世界で一番幸せだと云っていた。
だからこそ俺は、簡単にはその言葉を口にしてやらないし、コイツの言葉に、直ぐにそれを返す事はしない。
時間を掛けて、俺がその言葉を云う有り難味とやらを、十分教え込んでやる。
俺の首に咬み付くようなキスをして、まだ余韻に浸っているコイツに、世界で一番の幸せを与えてやろう。
男の髪を梳いていた手で、半ば乱暴に髪の毛を引っ張って、俺は相手の顔を上げさせる。
少し顔を顰めている相手に、乱暴な手付きとは正反対な優しい笑みを向けて、その唇に触れるようなキスを施した。
途端に、和浩は嬉しそうに瞳を輝かすものだから、笑いが込み上げて来る。
俺に、メロメロに夢中な、馬鹿な親父。
好きで好きで堪らないから、俺はコイツが一番欲しがっている言葉を…………あの言葉を、云ってやろう。
―――――――――おかえり。
終。
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