黒鐡…39
顔をずらすと、もうずっと刺激して貰えない自身が足の間で揺れていて、蜜が滴っているのが見えた。
その上、無意識に自分の腰がくねっているのも分かって、激しい羞恥に熱が更に上がる。
「…ね…さ、くろが、ねさ…んっ、……も、もう…やっ、んん…っ」
「達きたいか、鈴。」
口調からして御島は笑っているのだろうと何となく理解出来て、僕は止めて欲しかった筈なのに、どうしてか御島のその問いに何度も頷いていた。
「なら、甘えろ。達かせて欲しいと、ねだって見せろ。……それが出来なけりゃ、何を言われたのか素直に吐くんだな、」
どうしてこんなにも執拗に、それに執着しているんだと、僕は眉根を寄せて疑問に思う。
だけど絶対に泣いたりしない僕が……首を絞められたってどんなに辛くたって泣かない僕が泣いたのだから、ただごとでは無いのかも知れない。
僕を囲うのが目的の御島からして見れば、僕が誰かに泣かされた事は、おおごとなのかも知れない。
囲う、と云う言葉にまた胸が苦しくなって、眉根が更に寄った。
誰かに甘えることなんて僕は絶対にしたくないし、それに射精させて欲しいとねだるなんて、あまりにも屈辱的じゃないか。
ねだる事も甘える事も、事実を告げる事も嫌だと伝えるように、僕はかぶりを振った。
素直に、事実を云ってしまおうかと一瞬考えたけれど、やはりそれはどうしても出来無い。
そんな僕に御島は喉奥で笑って、強情だなと呟いて……僕だって、自分でもそう思う。
だけど言えない。言える訳が無い。
僕の顔を好きな御島に、僕自身を好いて欲しいと告げるようなものだ。
顔は母のお陰で良くたって、中身が駄目なのだ。
僕自身など、ただ誰かに迷惑を掛けるだけの不必要な存在だし、そんな僕を好いてくれだなんて………迷惑な話だ。
御島には絶対に、死んでも迷惑を掛けたくない。
「こんなになっても吐かないとはな……余計に気になるぜ。鈴は本当に、俺を夢中にさせるのが上手いな」
「あぅ…んっ」
張り詰めた僕自身をうっすらと指でなぞられ、それだけでも達してしまいそうだったのに
彼の手は直ぐに離れて、その上、内部を掻き回していた指まで抜いてくれた。
ようやく苦しいぐらいの快感が終わったと思ったら、御島は僕の身体を軽やかに反転させる。
終わりでは無いのかと考える僕を見下ろして、御島は口端だけを吊り上げて笑った。
車内でのあの黒々しい雰囲気も、冷たい眼差しも今は薄れているけれど、普段の優しさは無いように思える。
「鈴、また泣いているのか。おまえ、意外と泣き虫だな、」
僕の顔を覗きこんだ御島の声音が少しだけ優しくなって、彼は顔を近付け、僕の瞼に唇を寄せて来た。
あのひどく感じる箇所を刺激されると、我慢しようとしているのに涙は勝手に零れてしまうから、どうしようも無いのだ。
「こ…これは、涙なんかじゃ…、」
それなのに、泣き虫じゃないのに泣き虫と言われた事が悔しくて眉を寄せながら答えると、御島はそうか、と返して可笑しそうに笑った。
そして御島は急に僕の上から退いて離れ、ベッド脇の机の引き出しを開けて、何かを取り出して直ぐに戻って来た。
身体の下敷きになっている縛られた両腕が少し痛くて、張り詰めた自身が、ひどく疼いて仕方が無い。
少し身を捩って、ずっとこのままなのかと考えた僕の上に、御島はゆっくりと覆い被さって来た。
「鈴…おまえが言いたく無いなら、それでも構わない。……が、言わなければ辛くなるぞ」
忠告、とでも云うような脅すような口ぶりに、身体が少しばかり緊張した。
何も答えずにいると、御島はいきなり僕の片足の膝裏を掴んで足を開かせ、何か固く冷たい物を蕾に押し当てて来た。
「な、何ですか…、」
「さあな。何だと思う、……未使用だからその点は安心しろ」
口角を上げて曖昧に返して、意味の分からない事を口にして、御島はそれを躊躇う事無く挿入して来た。
先ほどまで指で散々解されたそこは、良く分からないそれをあっさりと迎え入れてしまう。
「み、御島さん…?」
不安になって相手を呼ぶと、御島はくくっと笑って、まるでそれをもっと奥へ向かわせるように、指まで挿入して来る。
「ぁ…、な…何…っ」
「ここら辺、だったよな。鈴の好い所は…」
あの感じる箇所に冷たいそれを押し付けられ、身体が震えた。
此れは何なのかと少し怯える僕に、御島は目を細めて顔を近付けて……
「言わないなら、可愛い声でずっと啼いて居ればいい、」
「ん…っ」
耳元で吐息混じりに囁かれ、ぞくぞくと背筋に寒気が走った。
僕の声なんて別に可愛くも無いのに…と考えた瞬間、内部のその冷たい塊が唐突に振動し始めて、一瞬頭の中が真っ白になる。
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