黒鐡…40

「や…っ、や、あぁッ…ん――ッ」
 徐々に振動は増して、御島はそれを、あの感じる箇所に指で強く押し付けて来た。
 目の前がかすむような快楽に、身体が仰け反る。
 腰を動かして逃れようとするけれど、御島は反対の手で僕の腰を強く押さえた。
「うあっ、あッ…く…ん……っ!」
 羽音のような音が、振動が強まると共に大きくなって、身体中を電流が駆けるような痺れるような強い快感に、見開いた瞳から涙が零れる。
 どうして御島はこんなひどい事を平気で出来るんだと、僕はそう考えたけれど、直ぐに頭の中は真っ白になる。
 身体ががくがくと震えて、首を横に振って、泣きながら僕は何度も御島を呼んだ。
「鈴、止めて欲しかったら……分かるよな、」
 耳朶を緩く咬まれ、舌でなぞられてからひどく優しく、甘い声で囁かれて、何も考えられない。
「っあぅ…うっ、ん…ッ嫌…お願…ッ」
 御島の言葉に何度も頷いて泣きながら懇願すると、ようやく内部の強い振動は少しだけ弱くなった。
 その塊を押し付けていた指も少し引いて、苦しいほどの快楽が途切れる。
 激しく息を乱して、開いた両足がひどく痙攣しているのを感じながら、僕は諦めた。

 御島には、どうやっても敵わないのだ。
 僕はどう頑張ったって、彼の思い通りになるしか無いんだ。

「御島さんは…僕を……か、囲うのが目的、なんじゃ…」
「――――何だと?」
 恐ろしく低い声が響いて、僕は怯えるように肩をびくりと震わせた。
 彼の雰囲気がまた、震える程に黒々しく、獰猛な獣を感じさせるようなものに変わって
 汗でぐっしょりと濡れた身体が、途端に恐怖で冷えてゆくのを感じる。
「鈴、一から説明しろ。どうしてそうなる、」
「ぅあっ…!」
 身を乗り出した御島の指が深く埋め込まれ、振動している塊を再びあの箇所に押し付けて来て………
 悲鳴のような声を上げると、指は直ぐに引いてくれたけれど、僕は泣きながらかぶりを振った。

「もう、もう嫌だ…、こんな…こんなの、じゃなくて…黒鐡さんの………指が、……いい……」
 もう何が何だか分からなくて、自分の言葉すらも上手く理解出来ずに
 しゃくり上げながらそう告げると、御島は一瞬驚いたように目を少し見開いた。
 だけど直ぐに、振動しているそれをゆっくりと抜き去ってくれる。
「…ったく、可愛い事言ってんじゃねぇよ。喰うぞ、」
 苛立ったように言われて、だけど顔を近付けて来た御島は、僕の唇に優しいキスをしてくれる。
 軽く啄ばむようなキスを何度かしてくれて、それでようやく僕は少しだけ落ち着いて
 先程の自分の発言を思い出し、かぁっと熱が上がった。
 何て恥ずかしい事を口にしたのだろうか、と考える僕の前で、御島は身体をずらした。
 未だ蜜を溢れさせたままの、勃ちっ放しの僕自身に、彼が顔を近付けたのを目にして………下肢が、ひどく疼いた。

「…早く咥えてイカせてくれって面してるな。」
 揶揄されるけれど、僕はそれに反論出来る余裕なんて無かった。
 せっつくように御島を呼ぶと、相手は目を細めて笑って、直ぐに僕自身を口に含んで来た。
 甘い疼きが身体の奥を走って目を瞑ると、蕾に当てがわれた御島の指が、ゆっくりと内部へ侵入して来る。
「ん…ぅ、はぁ、あ…あッ」
 内部を探る指の動きに朦朧とし、僕自身を舌を絡めながら奥まで呑み込まれ、そのままきつく引き抜かれると僕は堪らずに腰を揺らした。
 ずっと刺激されなかった所為か、快感はあまりにも鋭くて……。
「ぁっ、く…っあぁぁ…!」
 強く吸い上げられ、僕は呆気なく声を上げて、御島の口腔へと欲を放った。
 あまりにも濃い絶頂感に意識が飛びそうになり、唇を咬んでそれに耐えていると
 まだ身体の痙攣が治まらない内に、御島はいつものように残滴を残すまいと、達したばかりの僕自身をもう一度きつく吸い上げて来る。
 続け様の強い刺激には流石に耐えられず、目の前が真っ白になって、意識は途切れてしまった。



「おい…聞いてないぞ。俺があの碧い器を割って、兼原とあの子を鉢合わせるだけの話だった筈だ。怪我をさせるなんて、聞いていない。病院に運ばせたが、危なかったぞ」
「兼原が悪いんだぜ。あの女が鈴を厄介払いしようとしてる事だけを、奴が云えば良い話だった。だが兼原の野郎、鈴の首を絞めやがったからな」
 人の微かな話し声が耳に入って、僕はうっすらと瞼を開けた。
 見慣れない天井が視界に入ったけれど、寝起きの悪い僕はただぼんやりとそれを眺めるだけで、起き上がる事もしなかった。
「大体、お前があの子に直接云えば良い話だろう。回りくどい事をするなよ、」
 けれど次第に意識がハッキリとして来て、御島が誰かと会話をしているのだと云う事が、ようやく理解出来た。


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