黒鐡…59

 そう決めて、暫くの間は目を閉じて寝ようと努めていたけれど、中々寝付けず、ゆっくりと瞼を開けた。
 御島が傍に居ないとどうしても上手く寝付けないし、何度も目が覚めてしまう。
 二日間良く眠れなかったから眠気も強いし、今日こそは眠れるだろうと思っていたのに、目は冴える一方だった。
 寝返りを打って、ベッドの上で目を閉じている御島の寝顔を目にして、あの人の傍で眠りたい衝動に駆られる。
 僕はこんなに子供染みていたかと眉を寄せて、御島に甘えたいと思っている自分を叱咤して、もう一度目を瞑った。
「鈴、眠れないのか」
「え…、」
 急に声を掛けられて目を開くと、眠っていた筈の御島は上体を起こして、此方に顔を向けていた。
 御島の問いに否定しようとした僕は思いとどまって、素直に頷く。
 すると御島は目を細めて、口端をうっすらと上げ、指だけで軽く手招きして来た。
「……変な事、しませんか?」
 手招かれるままに向かえる筈も無く、少し警戒するように尋ねると、御島はとても大きな舌打ちを零してベッドから下りた。
 驚く僕に御島は近付いて、片腕を怪我している事なんて気にしていないように、僕を軽々と抱き上げた。
「み、御島さん…傷が…」
「おまえが傍に居ないと、安眠出来ねぇんだよ」
 苛立った口調で言葉を放ってから、御島は足を進め、僕をベッド上へと優しく下ろしてくれる。
 そのまま一緒に寝るのかと思いきや、御島は唐突に僕の上へ覆い被さって来た。
 逃げる間も無く顔を近付けられて唇を奪われ、何度か啄ばむような、軽い口付けを繰り返された。
「んっ、ぅ…ッん…ん…」
 舌先でじっくりと唇を舐られ、無意識に自分から唇を薄く開くと
 直ぐに御島の舌が入り込んで来て、そのまま口腔を探られて舌を絡められた。
 御島の服の胸元を縋るように掴むと、彼の大きな手にその手を握り込まれ、僕は薄く目を開く。
 あの力強い双眸がギラついて、熱が籠もったようなものに変わって、此方を見据えている。
 その事にぞくぞくと寒気が走り、御島の双眸に気を取られていた隙に、上衣を思い切り捲り上げられた。
 露わになった胸元に手を滑らせられ、乳頭を指で擦り上げられると
 身体はその刺激にびくんと震えて、下肢に熱が溜まってゆくのが自分でも分かった。
「…んぅっん、ぁ…っ」
 御島は歯列や上顎をじっくりと舐めながら、親指と人差し指で乳頭を摘んで、捏ね回して来た。
 電流のような、痺れるような快感に身体が仰け反って、僕は咄嗟に御島の腕を掴む。
「……どうした、」
 舌を抜き去った御島に声を掛けられてはっとして、今掴んでいるのは怪我をした方の腕ではなかったかと、僕は慌てて手を離した。
 視線を向けて確認すると、どうやら僕が掴んだのは左腕で、怪我をしている方の腕では無かった。

「ど、どうしたじゃ有りませんっ、こんな…こんな所でこう云う事、しないでくださいっ」
 その事に少し安堵して、快楽に流される所だった自分を心中で叱咤しながら、御島を咎める。
 すると御島は可笑しそうに喉奥で笑って、顔をずらして、僕の首筋へと顔を埋めて来た。
「ちょっ、御島さん…っ、ぁ…、」
 ざらりとした感触が首筋を伝って、少し痛みを感じるぐらいにそこをきつく吸われた。
 堪らずに身を捩ると、御島の片手が僕の股間部へと滑り落ちて、服の上から性器を撫でられる。
「み、御島さん…だっ、駄目ですっ」


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