黒鐡:後書き
ようやく、完結しました。かなり長い作品になってしまいました。
「初恋」をテーマに、強くなってゆく子・徐々に変わってゆく子を書きたい、と思って執筆した作品です。
後半は兎に角シビアにしようと考えていたので、前半は対照的に、敢えてほのぼのとしてます。
実は初期の設定では、御島が鈴の家に通っている辺りから執筆しておりました。
自分の作品の中で、出会いをきちんと書いたものがあまり無い事に気付きまして…出会いから執筆し直した為、更に長くなりました(汗)
キーワードの「裏切り」については、鈴を裏切ったと見せ掛けて実は当主を裏切るって事です。

ちなみに、他人の目が視れなくなった理由に気付いた後から、鈴は少しだけ目を視れるように変わってます。(鈴本人は気付いてませんが)
それと一番最初の部分で、御島が居ない事を知った時の鈴、実はホッとしているのでは無く残念がっているんです。
あの時から既に、御島の事がかなり気になっていたと云う設定です。(鈴本人はやっぱり気付いてません)

最後は幸せで笑わせるか泣かせるか結構迷ったんですが、幸せで泣かす事が出来るのも良いなと考えて、ああなりました。
正直言うと、全く泣かない子が幸せで泣くって云う方が良かったので、鈴が良く泣く子になってしまったのが少し残念だったり。
でも鈴、人間らしくなったから良いかなと。


キャラについて
相馬 鈴[そうま すず]
ラストの方で、頑張って強くなろうとしております。静かに強くなってゆく子です。
身体が何処かしら弱い子の方が、強さがより際立ちそうに思えたのと、 構成当時『白昼堂々』と云う小説に嵌っていたのも合わさって、病弱敬語受けとなりました。(長野さんファンの方、すみません;)
好きな人の為に少しでも強くなろうとしたり頑張ろうとする子は、書いていて楽しい。
母親を醜いと思った事に不快感を抱いた鈴を執筆していた時、「この子凄いな」と自分で作ったキャラなのに思いました。 醜いから嫌だ、では無く、醜いと思ってしまう自分が嫌。そう云う考えって、中々出来無い気がするので。
人を好きになると弱くなる、と鈴は思っておりますが…強くもなれるって事を、多分この子はいつか気付くと思います。

黒鐡[くろがね]
鈴に対しては縛り付けず、自分の手の上で自由にさせてやる人です。(笑)
この人の科白は特に気合いを入れて考えていたので、かなり疲れました。
鈴を殺そうとした場面ですが……願いを言わせたい為です。
もし鈴があの時願いを口にしなかったら、自分の手で殺していました。その気になれば好きな相手だろうと殺せる人です。
なので、御島は自分勝手な面が強いです。願いを中々口にしようとしない鈴に苛立っていたのも有ります。
そこら辺をきちんと書きたかったんですが、一人称では書けませんでした。残念。
裏話:Burnの坂井と幼馴染だったりします。本編その後、坂井に鈴を会わせるものの、鈴が坂井を気に入った事に対し嫉妬する、と云う裏話が有ります。

相馬 美咲[そうま みさき]
鈴の母親。当初、この人は鈴に対して歪んだ愛情を抱いているって設定でした。
愛しすぎて、鈴が自分の手元から離れてゆくのが恐くて、いっそ殺してしまおうと考え、御島に鈴を殺すよう頼んだ。って設定でした。
でも執筆している内に矛盾が多く出て、ややこしくなって収集付かなくなったので、普通に鈴を嫌っている事になりました。 鈴を殺すよう依頼した人物も、違う人になりました。
家元と云うのは、もっとしっかりした人がなるものなので…彼女は家元らしくないです(汗)

逸深[はやみ]
良いお兄さん風だけど物事を結構きっぱりと口にする上、御島の云う通りサドで歪んでます。
何処ら辺がサドで歪んでいるかと云うと、本編では書きませんでしたが、当主を精神的に追い詰めて愉しんでる人です。
ちなみに逸深は完璧にタチです。女性と関係が一度も無いので、御島の云う通り死ぬまで童■です。(一応伏字で)
裏話:実は当初、鈴に会うのは逸深では無く、Burnの坂井だったんです。Burnにも御島が出たので、こっちにも坂井を出そうかと思いまして。
でも坂井は鈴に向けて、御島と付き合うよう奨めるようなキャラじゃないなと考え直して、止めました。

鐐[りょう]
六堂嶋家の当主。流れ的に、本編で本名を出せませんでした。
鐐と云う漢字は『しろがね』って意味を持っているそうです。 漢字辞典引いたら、そう載ってました。黒と白で、黒鐡の弟の名前にピッタリだと思って付けました。
誰からも愛されない上、実の父親に見限られて命まで狙われた人です。三年前の事故の後遺症で片目のみ視野欠損。
ちなみに彼は梛鑽の為に、わざと嫌な態度を取って、他人に嫌われるような人間になろうとしてます。
詳しい理由を、いつか短編で書くかも知れませんし書かないかも知れません。

梛鑽[なきり]
鐐の奴隷。前当主(鐐の父親)は、黒鐡に時期当主の座を与えたいが為に、梛鑽に頼んで鐐を殺そうとしていました。
梛鑽は鐐を事故に見せ掛けて殺そうとしたものの失敗。それが三年前の事故となってます。
六堂嶋の人間関係は、かなりどろどろしてます。
詳しい話は構成済みなので、いつか短編か中編で書くかも知れません。


最後に
気が向けば、その後の番外編を書くつもりで居ます。今度は三人称で書きたいなぁ、と思っております。 鈴がバイトをし始めて、御島が殺しを辞めて別の仕事をし始める感じのお話は考えてます。(Burnの坂井に奨められてボディガードに。)
「僕と黒鐡さんって恋人同士なんですか?」とか、御島に向けて直球に訊くような鈴を書くつもりです。 でも、気が向かなかったら書きません。
正直云うと書きたい小説が他にも有って手が回らない為、番外編を書けるかどうか不明です。

題名の意味を、お話の所々に含ませております。
一箇所でも意味を汲み取って貰えたり、こう云う意味なのかなと、考えて頂ければ幸いです。
どう云う意味なのか尋ねられても、これに関してはお答え出来ません(汗)

此の作品を少しでも楽しんで頂けたなら、執筆者として本当に幸せです。
長い作品にも関わらず最後まで読んで下さり、有り難う御座いました。心より感謝申し上げます。

2006.8.25  葦原