証…08
やがて奥まで到達しても無理はせず、慣らすように、緩く浅い抜き差しを繰り返した。
嘉島の優しい扱いに胸を熱くさせた蓮は、両腕を回し、きつくしがみつく。
それに応えるかのように、嘉島が片腕で抱き返す。
「はぁ…っは…憲吾さ……あ…っ、もっと…もっとしてください…」
縋るように誘ってくる蓮を前にして、嘉島の口元に会心の笑みが浮かぶ。
猛々しい雄は徐々に速度を上げ、狭い蓮の中を押し広げるように進んでは引いてゆく。
身体の奥底まで犯されてゆく感覚に、蓮は頭の芯まで痺れそうになった。
「あ…っあ…、ああぁ――…っ」
弱い部分を強く押し上げられたと同時に、前も握られて揉み込まれ、蓮の喉元がのけぞる。
前も後ろも刺激されては耐えられず、蓮の欲望は呆気なく弾けた。
痙攣した襞が、中にいる熱源をきつく締め付けたが、それは唐突に抜け出てゆく。
「蓮、まだ休むなよ」
急な喪失感に不安げな表情を見せた蓮へと、短い言葉を掛ける。
そして軽々と蓮の身体を反転させ、うつ伏せにさせると、腰を高くあげさせた。
乱れた着物が、汗で濡れた肌に纏わりつく。
嘉島はそれを脱がそうとはせず、少し捲り上げ、蓮の双丘を剥き出しにした。
白い肌に、着物の燕脂色がよく映える。
「……おい、ヒクついてるぞ」
嘉島が何処を見て云っているのか、瞬時に察する。
その場所に嘉島の視線を感じ、蓮は羞恥で顔を熱くさせた。
逃げるようにして目の前の水槽へ視線を移すが、上気した自分の顔が硝子に映り、羞恥心は更に込み上げてしまう。
慌てて顔を背けると、その様子に気付いた嘉島が鋭い双眸を細めた。
「俺に犯されて、どんな顔をしているのか…しっかり見ていろ」
「そ、そんなの…無理です…」
耳に届いた科白に熱が急上昇し、蓮は咄嗟に目をつむる。
それを咎めるかのように、硬さを保ったままの雄を蕾へ押し当てた嘉島が、ぐっと腰を突き入れた。
「ひ…、ああぁ…っ!」
指先まで痺れるほどの快楽に目の前がかすんで、甘い悲鳴が上がる。
休む間も無く、奥まで一気に押し入った嘉島に荒々しく突き上げられ、強烈な刺激に蓮の膝はがくがくと震えた。
絡み付いてくる襞を強引に押し広げるように、嘉島は何度も律動を繰り返す。
「蓮、どうだ…これでもまだ思い出すのか、菅田の野郎を…」
「…ふ、あ…ああ…っん…あ…っ」
荒々しい突き上げの合間に問われても、蓮には答えられる余裕など無い。
嘉島を受け入れている部分が熱く痺れて、蕩けそうなほどの甘い愉悦に包まれてゆく。
返答もできないほど、快楽に耽溺している蓮に満足した嘉島は、より一層動きを速めた。
腰を回すようにして打ち付け、激しく責め立てると、蓮の腰も淫らに揺れ動く。
溢れ落ちる蜜で濡れそぼった蓮自身へと、嘉島の手が伸びる。
「………もう誰の手にも渡さねぇぞ、蓮……」
背後から、蓮の耳朶を一度だけ甘咬みした嘉島は
息を荒げながら、低く、熱のこもった声音で囁いた。
動けなくなるまで快楽を刻み込まれ、欲望を出し尽くした後、蓮は意識を手放した。
次に意識を取り戻すと水槽の見える部屋ではなく、寝室にいた。
ベッド上に寝かされて、着物どころか何も身につけていない。
ぼんやりと天井を眺めていた蓮は、身体に何かが触れる感触を訝り、ゆっくりと上体を起こす。
「…目が覚めたか」
嘉島は一瞬だけ視線を合わせて呟き、濡れタオルで蓮の身体を拭き続ける。
べたついていた肌を丁寧に拭われ、蓮は心地好さに目を細めた。
身体を拭いてくれることなど滅多にない為、余計に、喜びが溢れる。
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