盛夏…08
「今日、泊まっていきなよ…ヒロ、」
少し離れた唇の間で、囁く。
息が掛かる感触に、宏孝は擽ったげに目を細めた。
もう一度唇を重ね、また離す。
何度か浅い口付けを交わしながら、無意識に宏孝の二の腕を掴むと、指先が傷口に触れた。
「…っ、」
肩を揺らし、痛みに眉根を寄せた宏孝を見て、慌てて手を離す。
「あ、ごめん。早く手当てしないとね」
「そんなん後回しでいい。しようぜ」
春の肩を掴み、ぐっと体重を掛けて押し倒した。
それに動じる素振りは無く、宏孝の頬を撫ぜてから、春は若干心配げな表情を見せた。
「…夏場は、消毒しないと危ないよ」
「傷が深い場合だろ。そんなに心配なら、春が傷口舐めろよ」
こんな風に…と言葉を続かせて、春の指に舌をゆっくり這わせ、笑う。
挑発的なその姿は、欲情をひどくそそる。春の喉元が、上下した。
急いで身を起こし、宏孝を押し倒すと、露出した肌に唇を寄せる。
赤い傷口を舌先でなぞると、肩が揺れた。
青痣に吸い付けば、宏孝は少しだけ身を捩り、微かな呻きを零す。
構わずに舐った瞬間、宏孝が髪を掴んで緩く引く。
「バカ、痛ぇよ」
「舐めろって言ったのはヒロちゃんだよ」
「んじゃ、舐めるなら傷口と痣以外で、よろしく」
「はいはい」
勝手なことを言われても、不満は一切感じない。
首筋へ吸い付き、肌を甘く咬んだ後、ゆるりと下降する。
熱い舌が擽るように這い、じっくり舐られる感覚に、宏孝は背筋を震わせた。
「なあ、ハジメ…コッチも」
我慢出来ずに春の手を掴み、股間部へ導く。
服越しでも分かるほど、そこは硬く張り詰めていた。
「相変わらず、ヒロちゃんは直ぐ硬くなるね」
「…ん…っ、…いいから、早くしろよ」
膨らみを撫ぜ、優しく揉んでやると、じれったげな舌打ちが響く。
あまり焦らすと宏孝は機嫌を損ない、最後までさせてくれなくなる。
望み通りにしようと、下衣の前を開いて手を差し入れ、直に触れた。
幹を擦り始めると、宏孝の腰は淫らに揺れだす。
上機嫌になった春は、敏感な先端を指でさすってやった。
溢れ出した蜜を塗りつけるように指の腹で、ぐりぐりと擦る。次いで、鈴口に軽く爪を食い込ませた。
「すごいね、もうこんなに濡れてるよ」
「言うな……んっ、あ、あっ」
たまらず、宏孝は春の首にしがみつき、耳元で甘い声音を響かせた。
追い上げられ、息を熱く弾ませながらも春の耳を舐め、吸い、愛撫する。春の情欲は、いっそう強まった。
「ハジメ、もう…いく、いっちまう…っ」
切羽詰った声が響き、しがみつく力が強まると、春の口元が自然と緩む。
一際激しく扱いた瞬間、手の中のそれが脈打ち、熱を爆ぜた。
「…ヒロちゃん、気持ちよかった?」
ぐしょ濡れになったそこから手を引き、頬に口付けて問えば、宏孝は身体をゆっくり離す。
「服、汚れちまったじゃん」
自分よりも、春のほうにまで白濁が飛び散った事態に、不満を洩らす。
素早く服を脱ぎ捨てて、宏孝は平然と裸体を曝け出した。
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