かけひき…10

「耳が弱いのか、冬希は」
 力なく凭れてくる冬希の背を撫でながら、低く笑う。
 予期せぬ刺激を受けて思考が鈍り、半ば放心状態の冬希は、反論も出来ない。
「なんで、と訊いたな。知りたいか?」
 刺激された耳を赤く染めて面をあげられずにいる冬希を見つめ、祐一は胸の内を熱くさせる。
 実に愛らしいなと胸中で笑い、一呼吸置く。

「おまえを好きだからだ、冬希…」
 囁くような低い声音が耳に届くと、冬希の顔が勢いよくあがる。
 驚き、戸惑い、混乱、さまざまな感情が、瞳に色濃く浮かんでいる。
「うそ…だ…」
「嘘じゃない」
「なら、からかってんだろ…おれが、単純だからって」
「からかってもいない。私は本気だ」
 まっすぐな瞳に射抜かれ、冬希はあえぐように呼吸を繰り返す。
 何度か唇を開きかけては閉じ、やがて視線を落としてから力無く、祐一の胸を押した。
「おれは…女が好き、なんだ……だから、だから…そんなこと言われても、なびかない」
 祐一の言葉が信じられない冬希は、もう傷つきたくないが故に、守りに徹してしまう。
 震えた声で懸命に言い切ると、すこしだが抱き締めていた力が緩んだ。
 優勢を感じ取った冬希は奮い立ち、睨むようにして祐一を見据える。

「いま、おれ、女と付き合ってんだ。今日はそいつの家に行かなきゃいけないし、だからもう離せよ」
「……相手は、昨日キスしていた子か」
「な、なんで知って…」
 大きく目を見開いた冬希の顔が、さっと紅く色づく。
 それを目にした祐一は嫉妬心を抑えきれず、強引に唇を重ねた。
 もがいて逃げようと暴れる冬希の抵抗を物ともせず、舌を差し入れ、口腔を探る。
 容易く舌を絡め取ると、深く貪って強く吸った。
「ん…んん…!」
 激しい口づけに慣れていない冬希は、息が上手く吐けない。
 苦しげに逃げようとするが、祐一は尚も執拗に舐り、貪った。
 扇情的なキスに、頭の芯が甘く痺れる。
 軽い酸欠を起こして力が抜けると、ようやく唇が離れたが、それだけでは終わらなかった。
 冬希は畳の上へと倒され、何の断りも無く、祐一の解いたネクタイで両手首を縛られてしまう。
 上衣を捲りあげられ、露わになった平らな胸元へ、祐一の手が這う。
 素肌を撫でられる感覚に、冬希の意識は次第にはっきりし始めた。
 縛られた手を驚いて見てから、祐一に眼差しを移す。
「なに、してんだよ」
「……なんだと思う?」
「あ…っ」
 いきなり乳首を摘まれて、身体が跳ねた。
 痛くないよう加減をしながら、祐一は乳首を押し潰した。
「んっ、…よ…よせ、やめろよ…っ…ぅん…」
 尖ったそこを捏ね回され、指先で転がすように愛撫される度に、甘い痺れが身体中に走る。
 零れる声が抑えられずにいたが、それでも弱々しく訴えた。
 いったいぜんたい、どうしてこうなってしまったのかと考えを整理する暇もないまま、祐一の手によって下衣を剥ぎ取られてしまう。
 乳首への刺激だけで、中心は既に硬く張り詰めていた。
 下半身を露にされた所為で、そこが祐一の目に触れてしまい、冬希は身じろぐ。
 わけも分からないまま感じてしまった恥ずかしさに、耳まで赤面しながら精一杯、祐一を睨みつけた。
「なん…なんで、こんな…」
「察しが悪いな。女と寝たことはないのか?」
「寝る…って、なに言…っあ…!」
 不意に性器を直に握られ、揉み込まれた。
 乳首までも同時にさすられて、鋭い快感が全身を駆け巡る。
「すごいな。少し弄っただけで、どんどん濡れてくる」
「あっ、うあ…っ」
 ほら…と囁きながら先端を緩やかになぞられ、腰が震える。
 強すぎる快感に抗えず、刺激を受ける度に冬希は甘い声をあげた。

「そんな声を出して…人がきたらどうするんだ?」
「…だったら、も…っ、やめろ、よ…」
「ここでやめたら、自分で慰める羽目になるぞ。それに…」
 息も絶え絶えに返すと、ぐっと祐一の顔が迫る。
 キスされると考え、とっさに目を瞑った冬希の耳へ、唇が近づく。
「誰がこようと、私は構わない。恥ずかしいのは冬希だけだからな」
 囁いてから耳朶を甘噛みすると、冬希の肩が揺れ動いた。
 彼の言う通り、恥ずかしいのは冬希のほうだ。
 シャツの釦一つ外していない祐一と違い、冬希はあられもない姿で。
 乳首は硬く尖り、下腹部の中心は、しっかりと勃起していて……その上、先走りで濡れたそこはてらてらとして、いやらしい。



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