かけひき…11
「ほら、冬希のでベタベタだ」
思い知らせるように、先走りに濡れた指を見せつける。
羞恥で頬を熱くさせて、顔を背けた冬希の耳に、愉しそうな笑い声が響く。
「あ…あんた…な、なに考えてんだ」
声を震わせ、それでも気丈に努めようと睨んでくる姿に、祐一は笑みを深めた。
(この強気が、剥がれ落ちる様が見たい)
胸中で、そんな望みを抱く。
「何って、私は冬希のことしか考えていない」
さも当然とばかりに返せば、冬希は歯噛みし、今にも泣きそうな顔を見せた。
「そんな、苦しくなるようなこと…言うなよ…」
振り絞るように、紡がれる言葉。
その裏に隠された感情は、祐一には、手に取るように分かった。
「……私のことが好きなんだろう?」
低く、囁くようにして問えば、冬希の瞳が揺らぐ。
「ち、違う…そんなんじゃ…」
かぶりを振って、まだ隠そうとする彼を、祐一は許さない。
震える性器を指先で一撫ぜし、力強い眼差しで、言えと促す。
追い詰められ、冬希の中でかたくなに築いていた壁が、がらがらと崩れてゆく。
唇が、わなないた。
「…す…き、だ……好きだ、あんたが…好き、だ…」
口にすると、塞をきったように溢れ出す。
何度も同じ言葉を繰り返してゆく内に、ひどく情けない気持ちになり、冬希は縛られたままの両手で顔を覆い隠す。
「冬希?」
「おれ…ユウイチさんが結婚しても好きで、それ言いたくなくて、でも結局言って、こんなん…情けねえよ…いやだ」
ついには泣き出した冬希を、祐一は煩わしいと感じることもなく、優しく抱き締める。
そして彼の手をやんわり退かせ、あやすように顔中へとキスの雨を降らせてゆく。
「おまえが自分自身を情けなく思っても、私は、冬希が愛くるしくてたまらない」
「なんで、なんでいまさら、そんなこと言うんだよ…もう頭ん中ぐちゃぐちゃで、意味、分かんねえよ…」
目をぎゅっと瞑り、冬希は今にも消えそうなほど、か細い声を発した。
「今だから言うんだ。私はずっと待っていたからな。おまえの心を知ればすべて欲しくなる…だが、おまえが二十歳になるまで待つのが人倫だと思ってな」
優しい声と共に、瞼に温かいものが触れる。
恐る恐る目を開ければ、祐一の顔が間近に見えた。
「だったら、すぐ離婚して、おれにそう言ってくれればよかったじゃんか」
「結婚した後、おまえは取り付く島もなく、私を避けていただろう。それに、事情有っての結婚だったからな」
「……事情?」
「あとで説明してやる」
余裕の表情で答えた祐一の、濡れた指が尻の窄まりに触れた。
冬希が驚きの声を上げても構わず、無理やり指先を埋める。
「うぁ…っく、な、な…んで、そんなとこ…」
逃げ腰になる冬希に構わず、祐一は無言のまま指を蠢かせて内部を探った。
「嫌だ、ん…っ、気持ち悪…」
どうにかして不快のもとを抜かせようと、冬希は躍起になる。
必死に腰をくねらせる様子は、祐一の欲情を煽らせるだけだ。
より深く指を埋めて内壁を擦り、撫でながら、冬希の股間に顔を寄せる。
「あ…ゃっ、あぁ…っ!」
張り詰めたそこへ熱い舌が這い、冬希のつま先が、びくりと跳ねて宙に浮いた。
こともなげに舐っている祐一へ、濡れた瞳が向けられる。
祐一は気づいたように目を合わせ、くびれへ吸いついた。
まるで冬希に見せつけるかのように、舌を出して根元から先端をじっくりと舐め上げる。
見ているだけで恥ずかしく、冬希は羞恥に震えながらも目を逸らせずにいた。
内側を探られる不快感。それを上回るほどの、強い刺激。
強烈過ぎる快楽に、理性が呆気なく崩されてゆく。
「…んぅ…っ、あ…ぁ…んッ…」
じわりと涙が零れて、淫らな声が洩れ、止まらない。
飲みきれない唾液が、口端から伝い落ちた。
「……冬希、人がくるぞ。いいのか?」
「やだ…や…、もっと…っ」
愛撫を止めると、冬希は首を振る。
囁かれると熱い息が亀頭にかかり、興奮と情欲を煽られて我慢出来ない。
祐一の言葉も耳に入っていない様子で、悩ましげな表情で愛撫をねだった。
満足そうに笑った祐一は、すぐには愛撫を再開せずに、意地悪く手を添えるだけにした。
すると、刺激を求めた冬希は自ら腰を揺らし、性器を手に擦りつけてくる。
男を知らない癖に、快楽に従順なその姿は、ひどくそそられる。
会心の笑みを深めてから、冬希の先端を口に含んだ。
「うあ、あ…あああ…っ!」
熱く湿った口腔に根元まで包まれ、きつく吸われる。
目の前が真っ白になり、冬希はあられもない声をあげて、達した。
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