宝物…4(終)

 総司は深い口付けを行ないながらズボンの前を広げ、取り出した自身を翔のそれへと擦りつけた。
 痺れるような快楽の波が、翔の全身を伝ってゆく。
「あっ、あ…んんっ」
 ビクビクと震える翔の唇から甘い声が零れ、総司の興奮を掻き立てた。
 きつく舌を吸われると同時に、総司の太いそれで強く擦られ、身体が熱く痺れる。
 先走りで濡れそぼったお互いのそれが、ぐちゅぐちゅと音を奏でて擦れ合う。
「…ふっ、あ…総司さん、のが…擦れて…んっ」
「気持ちいいか?」
「い…っ、いい…すごく…っ」
 こくこくと何度も頷く翔の口端から、唾液が伝う。
 なまめかしくくねる腰を、総司はしっかり掴んで、尚更激しく欲望を擦る。

「はあ…あっ、あ、…も、だめ、だめ…っ」
「達っていいぞ、翔。俺も限界だ…」
「ひ…あ、あああ…!」
 目の前が真っ白になり、翔の身体がビクビクと痙攣する。
 ひくついた腹の上へ、二人の白濁が飛び散った。
 同時に達した悦びに、とろけそうな愉悦を感じて翔は目を閉じ、強烈な睡魔に意識を手放した。



 ベッドの中で目を覚まし、翔はしばらくぼんやりとしていた。
 徐々に意識がはっきりしだして、勢いよく身体を起こす。
 少し離れた先で、総司が壁に凭れて煙草を吸っていた。

「お、おれ、寝ちゃった? いま何時?」
 窓の外へ視線を投げれば、外はすっかり暗くなっている。
 落ち着きなく自分の格好を確認すると、制服ではなく総司の服を着ていた。
 汚れたから着替えさせてくれたのだろう。そう察すると同時に、総司との情事を思い出し、体温が上昇する。

 総司は吸いかけの煙草を灰皿に押し付けて消し、ベッドに近寄った。
 傍らに座ってきたことで、ぎしっとスプリングが軋む。
 その音を聞いて、総司の存在を余計に意識してしまい、翔の胸は高鳴った。
「もう夜も遅い、今日は泊まっていけ。姉さんには連絡しておいた」
 総司の手がそっと、翔の頭に触れる。
「いいの?」
「……いいもなにも、俺がおまえの傍に居たい。駄目か?」
 目を細めて微笑む総司に、胸の奥が甘くうずく。

 突進するようにして全体重をかけ、抱きついても、体格のいい総司は倒れない。
「駄目じゃない。おれ、嬉しい」
 破顔して満面の笑みを浮かべる翔が可愛くて堪らず、その背中へ大きな手を回す。
 きつく抱き締めると、翔はくすぐったそうに少しだけ身を捩った。その直後、「あっ」と声が上がる。
「ごめんっ、総司さん」
「…どうした?」
「おれも飲むって言ったのに、結局しなかったから。いま、すればいいかな?」
「今度で構わない。なにも今日、一気にすることはないだろう」
 落ち着いた声と共に、髪を優しく撫でられて、翔は目をぱちくりさせた。
「そうなの? おれ、一気にするもんだと思ってた」
「まあ、そういう場合も有るだろうが……俺は、おまえを大切に扱いたいんだよ」
 優しく真摯な総司の言葉に、翔の胸は甘くうずいた。
 もっとくっつきたいとばかりに身体を寄せ、翔のほうから密着する。

「総司さんのペースに任せるから、その……い、入れるのも、いつか、して欲しい」
「……翔、おまえ…どこになにを入れるのか、ちゃんと分かっているのか?」
「うん。友達の赤坂が言ってた。聞いた時は気持ち悪さしか感じなかったけど、おれ、総司さんとならしたいから」
 熱の篭もった瞳で真っ直ぐ見つめられ、総司は欲情が高まるのを感じる。
 なんとかそれを抑えようと内心で四苦八苦し、冷静さを必死に繕いながら頷いてみせる。

「分かった」
 短く答えた総司の目の前に、小指が差し出される。
 総司が小指を絡めると、堪えきれないとばかりに嬉しそうに翔が笑う。

 指きりの筈が、総司は翔の笑顔に夢中で、中々指が離れない。
 翔も指を離さずに絡めたままで、うっとりと目を細める。

「総司さんとの想い出が…幸せな宝物が、これからも増えてゆくんだね」

 とろけそうな幸福感に包まれながら、二人は切れない指きりを交わした。



終。

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