陶酔…14


「……ゆーきくんは怖がりだから、ゆっくり慣らしていこうか」
 尽きない嗜欲に抑えを利かせながら触れるだけの口づけをし、頭を撫でると、優希は不満げに唇を尖らせた。
「それはまあ、怖くないと云えば嘘になりますが……三科さんとは、最後までしたいです」
「最後までって、意味分かってて言ってるのかな?」
「い、入れるんですよね……俺の中に、三科さんのを」
 受け入れる側に回ることを口にした優希の可愛さが期待以上で、笑みが洩れた。
「正直怖い、ですけど……でも、初めては三科さんがいい、です。俺の初めて、もらってくれますか?」
「なに、その殺し文句。はー、理性飛びそう。……俺をここまで溺れさせた責任、とって貰うぞ」
 少し低めの声音が耳の奥まで響き、優希は期待と恐怖の色が入り混じった瞳を向けた。


 数時間が過ぎ、ローションに塗れた指で優希の内側は充分ほぐされていた。
 最初は怖がっていた優希だったが、たっぷり時間を掛けて中を蹂躙されると、しきりに腰をくねらせて甘い声を立てるようになった。
「はっ……あ、んッ……ん、三科さ……はぁ、あ、早く……」
 腰を揺らしてねだる、なんともそそられる光景に、三科はようやく三本の指を抜いた。
「これだけ慣らせば痛くないよね。入れるよ?」
 ローションをたっぷり絡んでおり、牡はスムーズに侵入してゆく。
 硬くて熱く、大きなものが内側を押し広げる感覚に、苦痛は無く、快楽で頭の中が痺れる。
「待っ、待って、み、みしなさ……はあぁっ!」
 根元まで呑み込んだ瞬間、前を刺激されていないのに射精してしまう。
「奥まで入った瞬間イクとか……かわいすぎ」
 上機嫌になった三科は啄むような軽いキスを、繰り返す。
 そのまま優希の腰を抱え、ゆっくりと動かした。
「あぁっ、んん……あっ、ん……っ!」
 全身を駆け巡る快感に頭の奥が痺れそうになり、優希は三科にしがみつく。
「好きだ、優希。愛してる」
「……れも、俺も、好き……三科さ、ああっあ――っ」
 激しく突き上げられる度に、蕩けそうな快楽の波に襲われ、優希は何度も達かされた。
 頭の中が真っ白になり、甘ったるい嬌声を響かせている優希の唇に、三科の唇が深く重なる。
「ふぅ、……んっ、はぁ……ん」
「優希……なにが有っても、俺を信じて耐えられるか?」
 熱の籠もった双眸で見据えられ、優希は首を縦に振って約束の意を示した。


 目を覚ますと、三科の寝顔が視界に入る。
 無防備な姿が愛おしく、そっと髪を撫でてみながら、三科と交わした約束を思い出す。
(なにが有っても……)
 ヤクザと関わる道を選んだ時点で、覚悟は決まっていたし、三科と歩めない道なら選ぶ気も無い。
 それほどまでに、優希の中で三科は大きな存在となっていた。
「口調が変わってた。どっちが素なんだろう?」
 昨晩は余裕が無さ過ぎて、考えられることすら出来なかったが、三科の顔をまじまじと見ながら呟くと、三科の両腕が腰に絡まった。
「どっちも、かなぁ。気楽でいいのは、この口調だねぇ。会合の時とかは、嘗められないように、俺って言ったりするけどねぇ。おはよう、ゆーきくん、身体は平気?」
「おはようございます、全身が少し筋肉痛のような感じで……でもそんなに痛くは無いので、楽です。……三科さんが、優しくしてくれたから」
 後半は顔に熱が集まるのを感じて、三科に自分から抱き着いて胸板に顔を隠す。
「俺はどっちの口調でも、三科さんなら好きです」
「かわいいこと言ってくれるねぇ。顔、見せて」
「あ……、俺、その……すぐ顔熱くなるの、男らしくないですよね」
 顔を上げさせられ、更に赤面してしまう自分に苦笑する。
「ゆーきくんは、すぐ真っ赤になっちゃうほど、僕のことが大好きってことでしょ。嬉しいよ」
「うん、俺、本気で三科さんを愛してます」
 三科の唇へ、軽いキスを何度かする。
 チュッチュッと音を立ててキスを堪能する優希の姿に、胸の奥が熱くなる。



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