I miss you…10
「あ、…ッ…い、嫌だ、父さんっ」
そう考えて必死でかぶりを振り、彰人の胸元を叩いて断固拒否する。
まるで子供みたいなその行動に嫌気がさしたけれど、状況が状況なのだから仕方ないと自分に言い聞かした。
「かわいいな葵。それでは、私を煽るだけだ」
………どうして嫌がっているのが、煽ることになるのか分からない。
彰人の考えは長年一緒に居ても、未だに良く分からない。
動きを止め、つい怪訝そうに彰人を見つめていると、唐突に両腕を掴まれる。
しまった、と目を見開くが、時既に遅し。彼は一纏めにした両腕を、ソファの上に押さえつけて来た。
「と…父さ――ンっ、んん―…ッ」
文句を口にし掛けた途端唇が重なって、深く口付けられる。
顔を背ける間も無く強引に舌が挿し込まれ、敏感な上顎をなぞりだした。
何処をどう攻めれば安易に堕ちるか、まるで知り尽くしているように、じっくりと口腔を探って上顎を這い、確実に官能をくすぐって来る。
下腹に熱が溜まってゆくのを感じ、拙いと考えた矢先に、彰人の手が動いて性器を緩やかに扱き始めた。
幾度か扱かれた後、しなやかな指に揉み込まれて表皮を擦られ、身体が熱く震える。
巧みな愛撫に早くも理性が崩れ始め、抵抗も忘れて快感に没頭し始めた瞬間、彼の手が性器から離れてしまう。
「…ッ…ん……ぁ…、」
残念そうな自分の声が、小さく零れ落ちる。
さっきは嫌がっていた癖に、今じゃやめて欲しくないだなんて、単純と云うか………馬鹿、なのかな僕って。
「そんなに物欲しそうな顔をするな。……堪らなくなるだろう、」
唾液の糸を伝わせながら、ゆっくりと舌を抜き去った彰人は、喉奥で笑いながら甘く囁いた。
目を細めて、唾液で濡れた唇をうっすらと舐める彼の表情は……とても魅力的で、ぞくぞくする。
「あ…きと…っ、早く…」
焦らされる事に耐えられず、ねだるように腰がくねった。
もう何でも良いから、彰人のが欲しくて堪らない。深くまで繋がって、強烈な快感に溺れたい。
懸命にねだって見せても彰人は薄く笑うだけで、僕の性器を再び触ってはくれず、余裕有りげにネクタイを片手で器用に緩め、解き始めた。
そんな何気ない動作ですら、彰人がすると云うだけで、魅入ってしまうほど格好がいい。
眼を離す事も出来ず、彼へ視線を注いでいると、不意に両腕が解放された。
自由になった僕はほぼ無意識に、両手を下肢へ向かわせ、上手く自慰も出来無いのに
熱く疼く自身をどうにかしたくて、こわごわ性器を握り込もうとした。
が、直ぐさまその手を彰人に捕らえられ、再び一纏めにされる。
「葵、私が居るのに一人でするつもりか。…自慰もろくに出来無い癖に、」
揶揄混じりに囁かれ、かぁっと熱が急上昇する。
教えてくれなかったのは、そっちじゃないかと睨んだ刹那、彼のネクタイでいきなり両腕を縛り上げられた。
「や、…っ、彰人……お、お願い」
じっくり焦らして愉しむつもりなのかも知れないと思うと、それが嫌でたまらずに、僕は懇願しだす。
彰人の居ない間、性欲処理なんて出来なかったのだから、焦らさずに早く楽にして貰いたい。
僕のそんな望みなんて分かっている筈なのに、彰人は満足気に此方を眺めるだけで、何もしてくれない。
焦らされて、どれだけこっちが辛いかを察している癖に彰人はいつだって、僕を苛めて愉しむ。
「何がお願いなのか、きちんと言葉にして見せなさい」
しなやかな指が、僕の頬をゆっくりとなぞってゆく。
たったそれだけのことで、背筋がぞくぞくする僕は………やっぱり、変なのかも知れない。
「あ、彰人の……彰人の、お口で…ちゃんと、して…っ」
強烈な羞恥心で、どうにかなってしまいそうなのを何とか堪えて、そんな科白を口にする。
頬だけじゃなく、耳の方まで熱が溜まってゆくのを感じて、余計に恥ずかしくなった。
学園では余裕がたっぷり有るのに、彰人の前では全く無くなってしまうなんて、本当に情けない。
「それも良いが…少し違ったことをするのも一興、だな。」
ソファに腰掛けて薄く笑う彰人の表情に、つい見惚れてしまう。
………どうしてこの人、こんなに格好いいんだろう。
なんて事を考えている僕の身体を、彰人は唐突に軽々と持ち上げて、膝の上へ乗せてくれた。
何をするつもりなのか理解出来ずにいると、彼は整った顔を近付け、そっと唇を重ねて来る。
軽く重なって一度離れた後、今度は深く口付けられた。
大好きなひとの唇が触れる感触に、半ば陶酔していると、上衣の釦を慣れた手付きで外されて前を開かされる。
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