………どうなるかなんて、そんなの分かりきっている。
　キツーイお仕置きが待っているに、決まっているのだ。
　それだけは回避しなければと、僕は耐えるように眉根を寄せ、ぐっと歯を咬んで必死で我慢した。
　だけど、溢れ出た蜜でぐっしょりと濡れた自身が、少し擦れるだけでも達してしまいそうで
　次第に我慢出来なくなり、子供のように泣きじゃくった。

「ね…彰人…ねぇ、お願い…っ、おねが…」
　おかしくなりそうなほどの焦らしに耐えられず、必死で懇願すると、彰人は指を緩やかに抜き去った。
　どうして抜いちゃうの、と尋ね掛けた僕の腰を、彼は急に軽々と持ち上げて………。
「本当に、仕様の無い子だ。…達って良いぞ、葵」
「んっあ…っ…あぁ――ッ」
　甘く低い声が聞こえたと同時に下ろされて、腰をぐいぐいと押し付けられた。
　熱く雄々しい塊が、内側を押し広げるようにして侵入して来る。
　その感覚に耐え切れず、僕はあられも無い声を上げて達してしまった。
　濃過ぎる愉悦に包まれるが、彰人のソレは容赦無く進み、奥深くまで潜り込んで来る。

「ゃあっ、んあ…ぁっ…」
　余韻に浸る間も休む暇も与えずに、彰人は僕の身体を揺すり、猛った雄で内側を擦り上げて来た。
　達したばかりで過敏になった身体を虐めるのが、彰人はとても好きだって事を、僕は知っている。
　だけど僕も、彰人に虐められるのが嫌いじゃないのだから、本当に、どうしようも無い。
「凄いな、葵。…かなりキツイぞ」
　彰人の満足そうな声が耳に入って、胸がひどく熱くなった。
　もっとたくさん彰人を、愛しいひとを喜ばせて、満足させてあげたい。
　そう考えて自らも腰を揺らし、彼の頬や鼻先や唇へと、啄ばむようなキスを何度も繰り返す。

「彰人…好き、…っあ…あぁっ」
　想いを口にした瞬間、勢い良く奥を貫かれ、半ば乱暴に内壁を掻き回されて、甘い痺れが全身を駆け巡ってゆく。
　指の先まで痺れるような鮮烈すぎる快楽に、一瞬意識が飛びそうになった。
　それを察したのか、彰人は僕の腰を掴んで強引に回し、追い討ちをかけるようにして、奥を抉るように突き上げて来る。
「あうっ…んン、すご…っも、い…イク…」
　切れ切れに訴えると、彰人の双眸が、すぅっと細められる。
　珍しく、すぐに許してくれて、僕は歯を喰いしばることもせずに高みへ駆け上がり、やがて全身を激しく震わせながら達した。
　少し遅れて、彰人も小さな呻きを零し、熱を奥深くへ注ぎ込んで来る。

「………会いたかった、葵…」
　低く魅力的な声が耳の奥に響いて、夢みたいなその言葉に、頭の芯が甘く痺れた。
　余韻に浸りたかったけれど、僕は顔を上げ、彰人をじっと見据える。
　すると彰人は、呼吸を整えながらも満足そうに、僕の名を呼んでくれた。

　――――お願いだから、僕の名前以外呼ばないで。
　一瞬、そんな強い独占欲を抱いてしまって、胸の奥が切なくなる。
　独占欲なんて醜いし、何より、子供染みている。
　そんなものを抱いてしまうのは、離れてゆくのが恐いからだ。
　繋ぎ止めておける自信が無いから、束縛してしまうんだ。
　弱くて女々しい自分に嫌悪感すら抱いた途端、彰人は両手を拘束していたネクタイを解いてくれた。

「葵、随分と…いやらしい姿だな。痕も残ってしまっている」
　手首を掴んだ彰人は、くっきりと残った緊縛の痕にそっと口付けた。
　上衣の前を開かれた所為で、僕の胸や腹部には自分の白濁が飛び散ってしまってるし……彰人が云う通り、本当にいやらしい。

「あ…彰人の所為だよ。それに、この痕誰かに見られたらどうするのさ」
　縛られても結局は感じてしまった自分が恥ずかしくて、僕はつい、彰人を責めてしまう。
　けれど彰人は謝罪を口にする事も無く、それ所か小馬鹿にするように鼻で軽く笑った。
「坂井の奴に、見せ付けてやれば良いだろう」
「…な、何でそこで、坂井が出て来るの？」
　彼の傍にずっと居る事が出来る、坂井の名が、その口から出た事に強い不安感を抱く。
　以前、僕を虐めるのが好きだと云っていたから、彰人って多分、好きな人を虐める性格な訳で。
　そして、坂井を困らせたりするのを彰人は好んでいるし……。

「彰人…坂井の事、好きなの？」
　考えていたことを思わず口にしてしまって、僕は慌てて自分の口を塞いだ。
　様子を窺うように彰人を見上げると、彼はひどく呆れた表情を浮かべている。
「葵…おまえと云う奴は、どうしてそう…」
　大袈裟とも云えるほど、深々と溜め息を零した彰人は、ゆったりと前髪を掻き上げた。
　その仕種がひどく格好良くて、つい見惚れてしまったけれど、きちんと答えてくれない彰人に不安は強まった。


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