I miss you…15

「…きと、彰人…やだ……やだよぅ…」
 胸の奥が切なくなって堪らず、僕は一度動きを止めて、彼にしがみついた。
 頬や唇にしつこいぐらい口付けて、何度も彼の名を口にする。
 …………僕はどうして、こんなに弱いんだろう。

「何が嫌なんだ?ちゃんと言ってごらん。」
 セックスの最中だと云うのに、僕の言葉を聞こうとしてくれる彰人が、何よりも愛しく思える。
 彰人のことが誰よりも、何よりも大好きなのに。
 自分に自信が無い所為で、愛しいひとを信じられないなんて、余計に不安になるなんて………切ない。

「離れちゃ…や…嫌だ…っ」
 泣きじゃくりながら告げるけれど、腰は再び、淫らに揺れ出してしまう。
 本当に僕は、どうしようも無い。
 いつもは我慢出来るのに、今日はこんなに我儘になっちゃうのは、きっと熱の所為だ。
 熱が下がって、いつも通りの自分になったら、彰人に謝らないと。
 彰人を困らせるような事も、迷惑を掛けるような我儘も言わないから……だからどうか、傍に居させてって頼まないと。

「大丈夫だ、安心しなさい。私はおまえの傍にいる…」
 優しい声音で囁いてくれる彰人が愛しくて、たまらない。
 彼を困らせたくないから、我儘なんて云わないようにして来たのに。
 そんな風に優しい声を出されたら、もっと我儘になってしまいそうで、恐い。

「彰人…、すき…大好き…」
「いい子だ。愛しているよ、葵」
 うっとりするぐらい、魅力的な声音で甘く囁いた後、彰人は僕の性器から手を離した。
 扉の向こう側からは、坂井の呼び声が再び響く。
 部屋に入る事を告げられたけれど、彰人は構わずに僕の腰をぐっと引き寄せ、雁高の亀頭で何度も執拗に、好い箇所を押し上げて来た。
「ひっ…ぅあ、ああぁ――…ッ」
 強烈な刺激に身体が大きくのけぞって、目の前で火花が散る。
 扉の開いた音が聞こえたような気がしたけれど確認出来る余裕も無く、濃過ぎる絶頂感に襲われた。

「しゃ、社長…な、何を…」
 坂井の驚きの声が耳に入っても愉悦が強すぎる所為で動けず、ぐったりとして、彰人の胸に寄り掛かった。
 自分がどれだけみっともない格好をしているかすら今は頭に無く、まだ微かに身体を震わせながら呼吸を整える。

「何を…だと?聞きたいのか、坂井。」
「あ…い、いえ…それは…」
「なら、早く出て行け。……それとも見ていたいのか?私の恋人の、いやらしい姿を」
 まるで独占するように、彰人は僕の顎を指で掬い上げて唇を重ねてきた。
 唇をきつく吸われ、興奮が冷め掛けた身体は単純にも、熱を取り戻してしまう。
 首筋にまで口付けられ、じっくりと肌を舐められると身体の奥が疼き、僕は思わず彰人を締め付けた。
「まだ足りないのか、葵…」
「ひっ、」
 頭を擡げ始めた性器の先端を強く擦られ、腰がびくりと震える。
 ほぼ無意識に彰人の首へしがみつくと、僕は快楽を貪るように、腰を揺らし出した。

「し…失礼、しました」
 忘れ掛けていた声が上がってはっとし、視線を向ければ、急ぎ足で逃げるようにして部屋を出て行く坂井の姿が目に映る。
 慌てて彰人に視線を戻せば、その顔はとても満足げな色を浮かべていた。

 ………どうしてこんなにも、坂井にこだわるんだろう。やっぱり彰人は、坂井が好きなのかな。
 胸の奥で不安が強く渦巻き始めて、眉を寄せる。
 すると、出入り口の扉へ目を向けていた彰人は、僕に視線を合わせて来た。
「また何か妙な事を考えているのか、おまえは。」
「あうっぅ、ぁあ…っ」
 鋭い質問にどきりとし、慌ててかぶりを振ろうとするが、それよりも先に彼の雄で、泣き所を強く擦られる。
 指先まで痺れるほどの快感に、びくびくと身体を跳ねさせると、彰人は不意に僕の腰を持ち上げた。
 彰人自身が抜け出てゆく感覚に、もしかして抜かれるのと焦った僕は、引きとめようとソレを締め付けてしまう。
「葵…そんなに締め付けるな。私のを食い千切る気か、」
 耳元で恥ずかしい科白を吐かれて、強い羞恥心に苛まれる。
 どうしてそんな、恥ずかしい言葉を平気で口にできるのっ、とか、余裕が有ったら言っていたかも知れない。
 だけど今の僕には余裕なんて無く、身体は更に火照り、下肢はひどく疼いていた。


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