the mating season…17

 そのまま指先で転がされ、ビリッと焼け付くような疼痛が走る。
 思わず甘い声を漏らしてしまった僕を見下ろして、彰人はクスクスと小さな笑い声を漏らした。
「拭いて…ない、じゃん…っ」
 甘く息を弾ませながら文句を云うけれど、身体はもう、どうしようも無いぐらいに熱を上げて、疼いちゃっている訳で。
 彰人に触られただけで、こんなにも感じちゃうのは……発情期の所為だけじゃ、ないのかも知れない。

「そうだな、タオルは……もう必要無いな、」
 そう呟くと彰人は、いきなり僕の両手を掴んで一纏めにし、パイプベッドのヘッドへと縛り付けた。
「えっ、ぇ…何っ?」
 狼狽える僕には構わず、彰人は僕のズボンにまで手を掛けて、下着ごと脱がしてしまう。
 上体だけ裸だった僕は、いつのまにか生まれたての姿になっちゃう訳で。
 床へ服を放り投げた、彰人らしい彼の行動に少し呆れていると、素肌に唇を落とされる。
「ん…ッ」
 ビクン…と身体を震わせ、鼻に掛かったような声が自分の口から漏れた。
 指で乳首を捏ね回され、更に彼の冷たい唇が、もう片方の突起へと口付けて来るから……
 堪らずに、閉じたままの両足を、落ち着かないように動かしてしまう。

「はぁっ…あっぁ…ん、ぅ…っん」
 淡いピンク色の突起を指では抓られ、唇ではきつく吸い上げられて、我慢出来ずに、切なげな高く甘い声を漏らす。
「あ、彰人…、ゃ…そこ、そこだけじゃ…やだ…っ」
 拒否していた事なんてもう既に頭に無く、縋り付くようにねだって、彰人を見つめる。
 ちゅっと微かな水音を立てて突起から唇を離すと、彰人はその端整な顔に優しげな微笑みを浮かべた。
 その顔があまりにも魅力的過ぎて、心臓を鷲掴みされたように、僕は彼に見惚れてしまう。
 本当に、どうしてこんなにもカッコ良くてハンサムで……心臓に悪いぐらいに、魅力的なんだろう。

「そうか…、それなら…どこが好いんだ?」
 すぅっと彰人の指が下へと降りて、僕の内股をじっくりと撫で上げた後、更に下って……
 既に勃ち上がってしまっている性器を、やんわりと包み込むように握って来た。
 その甘い感覚に身を震わせていると、彼の手はゆっくりと動き始める。
「ぁ…んっ、ん…ンッ」
 まるで焦らすようにゆっくりと扱かれ、身体中が疼く。
 特に内部が痛いぐらいに疼いて、熱くて、僕の中で小さな理性が、音を立てて崩れてゆく。
「ゃあっぁ…ッ!……きと…の、彰人の…挿れ、て…ッ」
 結局、理性なんて無くなって、自分からそんなはしたない台詞を吐いちゃって……僕は、僕が大嫌いだ。

「この時期のおまえは…誰に対してでも同じ反応をしそうで、恐いな。」
 揶揄するような彰人の口ぶりに、僕は首を振る。
 彰人がそう考えてしまうのも、仕方の無い事だ。
 その発言が冗談だと分かっていても、傷付いたように相手を見つめてしまう。
「彰人じゃないと嫌だよ…、僕…彰人だから、こんな風になっちゃうんだよ、」
「それは……大変だな、」
 他人事のような言葉を吐くけれど、彰人の表情は何処か嬉しそうで。
 優しい眼差しで僕を見下ろしている彼が、好きで好きで堪らない。

 発情期になっちゃう僕も、快感に直ぐ負けてしまう僕も、
 弱くて、駄目で、何の取り得も無い僕も全部全部、大嫌いだけど……
 死ぬ程大好きで大好きで仕方ない彰人に、少しでも好きで居てもらえる自分の事は……嫌いじゃない。

「責任取って、ずっと面倒見て…」
 涙を零しながらそう哀願すると、僕の両腕を拘束していたタオルを、彼はゆっくりと解いてくれる。
 それから、力強い腕で僕を抱きこみ、耳元へと唇を寄せて……。

「当たり前だろう?どれだけ嫌がっても、手放すつもりは無いよ……」
 甘い声でそう囁かれて、幸せ過ぎて、頭が上手く働かない。
 それでも何とか、自由になった両腕を彰人の首へと絡めて、縋り付くようにしがみついた。
「彰人…好き、大好き…っ」
 今まで何度も口にした言葉を囁いて、啄ばむような口付けを繰り返し
 重なった唇の冷たく柔らかい感触に浸って、彰人の腕の中に溺れるように……僕はそっと、目を閉じた。



終。

16 / 後書き