昔歳…11
「ぁ…だめ、だめ…っ」
指先で執拗に亀頭を擦り、焦らす事無く手の動きを速めてやると、凪は口を塞いだままで無意識に訴えた。
悩ましげに眉を寄せ、更に背を丸めて俯く。
凪の顔が見えなくなった事に胸中で舌打ちを零し、猛は反対の手を動かして相手の顎を掴み上げ、顔を自分の方へ向けさせた。
受話器の向こうでは、何も答えない猛に苛立った吾妻が何度も名を呼んでいる。
吾妻の呼びかけなど今は耳に入らず、猛はゴクリと喉を鳴らすと、凪の顔を眺めながら追い上げてゆく。
「…やっ、だめ……あ、ぁあっ…!」
抑えきれず、悲鳴にも似た声を上げた凪は、華奢な身体を硬直させて猛の手の中に欲を放つ。
少し間を置いても小刻みな痙攣を繰り返し、あまりの快感からか凪は暫く放心していた。
猛は掌に付着した白濁を満足げに眺め、続いて凪の顔へ目を向ける。
未だに息を切らしたままの凪は頬に涙を伝わせ、此方に向けさせた顔は、陶酔の表情を浮かべている。
凪のその表情に激しくそそられ、愛しげに名を呼ぼうとした猛の耳に、吾妻の含み笑いが響いた。
「猛、お前…女連れ込んどるんか。女遊び、辞めた筈やろ」
吾妻の揶揄混じりの言葉に、猛は嫉妬にも似た不快感が込み上げて来るのを感じる。
凪の嬌声は自分だけのもので、誰にも聞かせたく無かった。
自分だけの声を聞かれたと思うと激しい殺意が込み上げ、兄貴分である吾妻すら消したくなる。
だが、凪が自分の胸へ、まるで甘えるように凭れ掛かって来ると猛は一瞬で、何も考えられなくなった。
「……兄貴、すんません。また後で、掛け直しますんで」
「あぁ?何言うとるんや猛、おい…猛っ」
電話越しに怒鳴り声を上げる吾妻には構わず、猛は凪の顎から手を離すと勝手に通話を終わらせる。
素早く電源まで切り、無造作に携帯を放り投げた。
――――――此れでもう、邪魔は入らない。
まだ放心している凪の身体を、抱き支えるようにしてベッド上へ優しく転がせてやる。
凪の上に覆い被さり、猛は自分の上衣の釦へと手を掛けた。
釦を外して上衣を脱ぐと、引き締まった半身が露わになる。
その広い背には、目にした者に向けて力強く吠えている雄々しい虎が描かれていた。
鮮やかな黄褐色の全身に、黒い横縞が見事に描かれて猛々しい雰囲気を醸し出し、今にもその背から飛び出して喉元を噛み千切って来そうな獰猛さが伺える。
母親から、決して弟には見せぬよう云われているものだ。
だが凪は既に、昨夜此れを眼にしていた。
怯む事も無く興味深そうに眺めた後、目を細めて微笑み、綺麗だねと意外な言葉を漏らした。
凪に恐がられなくて良かったと安堵した自分を思い出し、猛は僅かに苦笑する。
陶酔し切った表情に魅入りながら、凪は本当に、自分の心を捕らえるのが上手いと思う。
「凪、そんなに…気持ち好かったか?」
「ん…っ」
凪の細く白い足へ手を這わせ、掌に付着した白濁を内股から付け根に掛けて塗り付けながら、問う。
一度達した為か、内股に触れられただけで凪は小さく甘い声を零し、ピクリと反応した。
視線をたどたどしく猛に向け、ようやく少し我に返った凪は、弱々しくかぶりを振って見せる。
「良く、わかんない…」
「じゃあ、分かるまでたっぷり教えてやるよ。…その前に、俺も気持ち好くして貰うよ」
掛けられた言葉が理解出来ず、不思議そうに此方を見上げて来る凪を見て、猛は薄く笑う。
白濁を十分に塗り付けた場所から指を離し、ジーンズの合わせへ手を掛けると、完璧に勃ち上がった雄々しい自身を取り出して強引に凪の腰を引き寄せる。
「お、お兄ちゃん…?」
合わせた腿の背面へ猛った雄を当てがうと、凪の不安そうな声が耳に届く。
けれど構わず、猛は凪の両腿の狭間へと無理に押し入った。
凪は驚きで一瞬だけ息を呑んだが、逃げる素振りは見せない。
腰を突き上げる度に、掴まれた両腿の狭間から抽挿を繰り返す猛の、雄々しい雄に視線が釘付けになる。
自分のとは色も形も、大きさも全く違う事に凪は呆然とし、思わず自分のソレと何度も見比べてしまう。
「凪…少し、力入れてくれないか?俺の此れを、挟むような感じで」
「えっ」
唐突に声を掛けられ、慌てて猛へ視線を戻すものの言われた事をすぐに実行出来ず、凪は狼狽する。
だが猛は焦れた様子も苛立つ素振りも見せず、抽挿のペースを少し緩めながら、凪の行動を待つ。
「こ、こう…?」
「…ッ、いい子だ、上手いよ…凪…」
少し遅れながらも内股に力を込めながら問うと、猛は片手を伸ばし、凪の頭を優しい手付きで撫でてやる。
嬉しそうに口元を緩めながら褒めてくれる猛の姿を前にして、凪の胸は熱くなった。
大好きな兄が喜んでくれるのは、自分にとって一番幸せな瞬間だ。
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