昔歳…12
もっと喜んで欲しくなり、更に内股に力を込めると猛は微かに呻く。
「ね、お兄ちゃん……気持ち、いいの…?」
「ああ。…すごく、いいよ…」
凪に微笑み掛け、息を荒々しく切らしながら猛は答える。
眉根を寄せて深く息を吐く猛の姿を見ていると、凪の鼓動は速まり始めた。
脳裏には先程の行為ばかりが浮かび、頭の中が真っ白になるあの感覚を思い出すと凪の身体は震え、自分でも気付かない内に性器は頭を擡げ始めていた。
「…凪、勃ってる」
一度腰の動きを止め、凪の性器へ視線を注ぎながら猛はクスリと笑う。
勃ってるとは何かと考え、猛の視線を辿って目を移すと
形を変えた自分の性器を眼にしてしまい、凪は何とも云えない激しい羞恥に駆られる。
顔を赤らめ、恥らうように視線を逸らす凪の姿に、猛は軽い目眩すら覚える。
本当に、魅力的なのだ。
今まで抱いた女達とは、比べ物にならない程に魅力的で……激しく、欲を煽られる。
「俺だけ好い想いをするのも悪いし…二人で、気持ち好くなろうか」
「んぁあっ…!」
言うが早いか、猛は凪の返答も聞かずに場所をずらし、凪の性器を自分のソレで強く擦り上げた。
不意打ちのような快感に白い喉元を仰け反らせ、大きな反応を見せた凪に、猛は満足気な笑みを零す。
そのまま休む間も与えずに激しく腰を動かすと、凪は堪らずに眼を瞑った。
「ぅん…っ、あッ…んんっ…」
捕まる所を求めるように凪は手を彷徨わせ、やがて敷布をきつく掴む。
室内に響く甘い声色に酔っていた猛だったが、凪の手の動きに気付くと、顔をゆっくりと近付けた。
「凪…俺の身体に手、回してもいいよ。おいで…、」
「んっ、ン…、お兄ちゃ…っ」
優しい声音に誘われるかのように、薄く眼を開けた凪が小さな両手を伸ばし、縋り付くように猛の首へと必死にしがみついて来る。
女を抱いていた時は、自分の身体にしがみつかせた事など、無かった。
抱き付いて来られると、途端に興醒めするのだ。
だが今は、凪が相手なら、もっとしがみ付いてくればいいとすら、思う。
甘い声を上げ、自分を呼びながら必死にしがみついて来る凪が、心底愛しくて堪らない。
それこそ…………気が、違ってしまいそうな程に、愛おしい。
「どうだい、凪…気持ち、いいだろう?」
息を荒げながら猛が問うが、快感に深く捕われている所為で、凪は何も考えられない。
自らも誘うように腰を揺らし始め、涙を零して泣きながらも快楽を求めている。
凪の媚態を前にすると、興奮の寒気が背筋を駆け抜け、喉がゴクリと鳴った。
「凪、愛しているよ……離さない、」
耳元へ唇を寄せ、低い声音で無意識に囁き、耳朶を甘く咬む。
聞こえているのか、意味を理解しているのかは定かでは無いが、凪は自分もそうだと云うように、更にきつくしがみついて来た。
「お兄ちゃ…ん…っ…も、…ちゃう…出ちゃう、よぅ…っ」
「本当に可愛いな…凪は。ほら、イッちゃえよ」
華奢な体躯を震わせながら訴える凪にクスッと笑い、腰を打ち付けて性器を強く擦り上げてやると凪は高らかな声を上げて呆気なく吐精した。
猛も若干遅れつつ低く呻いて吐精し、眉を顰めて目を閉じながら小刻みな痙攣を繰り返す。
白濁を相手の腹上に放ち終え、一度深く息を吐いた後、目を開けて凪に視線を向ける。
「……凪?」
が、ぐったりとしている凪を目にして焦り出し、咄嗟に身体を少し離す。
息をしている事を確認し、失神しているだけだと理解すると猛は安堵の息を吐き、凪の肩口に額を押し付ける。
愛してくれる者など、もう要らない。
自分が心から愛せる唯一のひとが、俺を愛してくれさえ居れば、もうそれでいい。
「凪、お前だけを愛しているよ。」
余韻を愉しみながら声を抑えて笑い、今まで押し殺していた言葉を紡ぐと、猛は双眸をうっすらと細めた。
「愛している、凪。だから早く……」
―――――――俺を、愛してくれ。
幸多き未来に酔い痴れるように微笑を浮かべ、猛は凪の髪を指で緩やかに梳く。
髪から指を離し、敷布の上へ捨てた上衣を掴むと、凪の腹上に飛び散った白濁を拭いてやる。
凪が意識を取り戻したら一緒に風呂にでも入ろうと考えながら、猛は暗い双眸を伏せた。
俺の手の中に閉じ込めて、駄目になるぐらいに甘やかして…………一人では、絶対に、生きていけないようにしてやる。
華奢な凪の身体を強く抱き締め、猛は黒い感情を胸に潜ませる。
確実に獲物を捕らえようとしている鋭く暗い双眸は、背負った猛虎の双眸と酷似していた。
「俺は、お前を離さないからな……死ぬまで、」
ひどく優しく、甘い声が響く。
愛しげに凪の頬へ唇を寄せ、再度柔らかな髪を撫でると
猛は低い声音で静かに――――――けれど、壊れたように、笑い続けた。
終。
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