告白…8

「兄貴、喜んでたね。凌さんと仲直りしたって教えた時なんか、喜び過ぎて椅子から立ち上がっちゃったりしてさ…」
「ああ。」
 帰りの車の中で嬉々として話しかけたが、返って来た言葉は素っ気無いものだった。
 凌は、べらべら喋る質では無いけれど、今日は特に口数が少ないなと不思議に思う。
 ひょっとしたら、僕ばかりが喋って兄を取ってしまったから、拗ねてしまっているんじゃないだろうか。
 もしそうなら凌も可愛いところが有るんだなと、彼が本当は機嫌を悪くしていたことにも気付かず、呑気に考えていた。
 帰宅すると彼は酒を持ち出して、呑まないかと誘って来たものだから、僕は内心大喜びした。

「浩樹のことは、まだ好きなのか」
 二人で暫く呑み続けていると、不意に、静かな口調で問われた。
 そんな事を訊いて来る意図が分からず、少し首を傾げながら相手を見つめる。
「…何で、」
「浩樹の前だと顔が普段よりずっと輝いていた。…それに俺は、お前の泣き顔を初めて見たぞ」
 ちっ、と珍しく舌打ちを零して、凌はグラスに注いだ酒を一気に呷った。
 明らかに不機嫌と分かる態度を目にして、どうしたのかと思いながらも浅く頷く。
「好きだよ。兄貴が結婚しても、好きでいるんだと思う」
「…お前、浩樹の前では兄貴と呼んでいなかったな、」
「ねぇ、何かかなり質問攻めじゃない?ひょっとして凌さん、もう酔ってるの?」
 酒に弱いんだね、と笑い飛ばした瞬間、本当に唐突に肩を押され、気付けば絨毯の上へ押し倒されていた。
 上にのしかかって来た相手を呆然と見上げると、顎を掴まれ、端整な顔を近づけられる。
 冷たく柔らかいものが唇に触れたけれど、それは直ぐに離れてしまった。
 今のはキスだと、少し遅れて気付いた瞬間、凌の手が服の中へ早急に忍び込んで来る。
「凌さん、な…何考えてんだよっ、」
 肌をなぞられてぎょっとし、逃げようと暴れもがいたが、身体を強い力で押さえられてしまう。
 押さえつけられる痛みに呻くと、その隙に彼は片手で、僕のシャツの釦を慣れたように外し始めた。
 嘘だろう、と考えて血の気が引く。

「凌さ…冗談きついよ、ねぇ…うぁっ」
 あっという間に前を開かされて慌て、どうにかやめて貰おうと声を掛ければ、無骨な指で乳頭をこね回される。
 その瞬間、痺れるような疼痛が突き抜けて、僕は無意識に変な声を零してしまう。
 得た事の無い感覚に戸惑い、思わず身体を捩ると、凌はまるで小馬鹿にするように鼻で笑った。
「男の癖に、こんな所が感じるのか。敏感なんだな、」
「な、な…っ」
 掛けられた言葉に、かぁっと熱が急上昇してゆく。
 否定しようと口を開き掛けた途端、今度は指先で乳頭を転がされて、またしても変な声が零れる。
 自分のその声にはっとし、再度身体を動かして逃げようと試みた。
 しかし僕がどんなに暴れもがいても、体格が良くて力の有る凌には、敵う筈も無かった。
 それでも諦めきれず、押し戻そうと相手の肩へ両手を付け、力を込める。
 すると凌は再び鼻で笑い、僕の両手を片手で素早く捕らえて一纏めにした。
 そのまま押さえつけられて僕は息を呑み、徐々に強まってゆく恐怖で、身体は震えだす。

「悠樹、大人しくしていろ」
 まるで宥めるように、穏やかな声音を放ちながら、彼は僕の胸元へ顔を近づけた。
 そして信じられない事に、躊躇い無く、乳頭へ舌を這わせて来た。
「凌さ、嫌だ、って………っく、あ…ッ」
 そこをじっくりと舌でねぶられ、時折甘く噛まれる。
 身体の奥底から何とも云えない、もどかしい愉悦が込み上げて来て、抵抗する気は段々と薄れ掛けていた。
 音を立てて吸い上げられると、身体が少し仰け反り、下肢には熱が溜まってゆく。

「…嫌な割には、もう勃っているぞ」
 僕の身体を押さえていた方の手が動いて、性器を布越しに撫で上げて来る。
 乳頭を刺激されただけで勃ってしまった事も、それを見抜かれていた事も、恥ずかしくてたまらない。
 身体が火照って、今度は恐怖とは違ったもので背筋が震えた。
 この感覚は何だろうと疑問に思っていると、凌は本当に素早く、下衣を下着ごと剥ぎ取って来た。
 彼の無骨な手が、股間へ滑り込んで来る。
「ん…ッ…ああっ」
 慌てて逃げようとしたけれど、指で亀頭をなぞられて、鋭い快楽が全身を駆け抜けた。
 硬直し、尾を引く快楽に身体を震わせていると、凌の笑い声が耳に入る。



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