告白…9

「悠樹、お前…本当に敏感だな。もうこんなに溢れている、」
 溢れ出たそれを拭うようにして先端を撫でられ、びくりと腰が震えた。
 状況に戸惑いながらかぶりを振ると、今度は性器を揉み込まれる。

「い、嫌だ、やめ……あっ、ん、ん――っ…」
 自分でするよりもずっと巧みなその動きに、肌が粟立った。
 表皮を擦られ、ゆるゆると扱かれると、あまりの気持ち好さで力が抜けてゆく。
 指で挟むようにして裏筋を擦り上げられた後、一際強く扱かれて、目の前が真っ白になった。
「ッ…や、だ…あ、ああぁっ」
 早い、と思う間も無いまま、本当に呆気なく達した。
 息を切らしながら放心していると、僕の両手を押さえていた手が、そっと離れる。
 腹上に飛び散った、僕が放ったそれを彼はどうしてか指で掬い、絡めだした。


 ……………あんなものに触って、どうして平然としていられるんだろう。
 ぼんやりと思案している僕の膝を、凌は唐突に掴んで割り開き、間に身体を進ませて来た。
 液体を絡めた方の手が動いて、奥の方の窄まりに触れられる。
 ひどく嫌な予感がして、ぞくり、と背筋に寒気が走った。

「凌さん…まさか…、」
「何だ、知っているのか。なら…話は早いな、」
 相手は軽く笑い、何の断りも無く指を埋没させて来た。
 ひっと悲鳴を零し、僕は慌てて逃げようと動くが、腰を片手で押さえつけられてしまう。
 体格の良い相手に圧倒的な力で押さえられてしまったら、逃げられる筈も無かった。

 実際にやった事は無いけれど、男同士はそこで繋がるんだって事は知っている。
 だけど、受け入れる側が自分だなんて考えたく無かったし
 セックスを、こんな訳の分からない形で、しかも凌とやるなんて抵抗が有った。

「何で…っ、凌さ…」
 彼の指が、ゆっくりと奥へ侵入してくる。
 不快な感覚しか得られない行為に一度歯噛みし、震えた声で問い掛けた。
 しかし凌は何も答えず、探るように内部で指を蠢かせ、解すようにして粘膜を広げてゆく。

「指、増やすぞ」
 暫くして短い言葉を放った凌は、僕が拒んでも構わず、二本目の指を挿し入れて来た。
 圧迫感を伴いながら進み入って来る感触に、吐き気すら覚える。
 僕の意見なんて、どうでも良いかのような凌の態度が、悲しくて辛くて、そして腹立たしい。
 こんなのはセックスなんかじゃないと考え、僕は思い切り相手を睨みつけた。
「何で、だよ…凌さん、何でこんな…っ」
 腰を押さえつけている腕を掴みながら問うと、彼はゆっくりと此方へ視線を向けた。
 そして―――――。
「他に身寄りの無いお前を、飼ってやっているんだ。その礼ぐらい、くれても良いだろう」
 せせら笑いながら冷ややかな声音で、そう言い放った。

「な、に…それ…」
 凌の放った言葉が頭の中をぐるぐると駆け回って、愕然とする。


 ……………僕は、飼われていたの?
 凌は、今まで、そんな風に僕を見ていたの?

 そう考えると、まるで切り裂かれるみたいに、心が、痛んだ。
 ぐっと下唇を噛み締めると、指を更に深くへ埋め込まれて、全身がびくりと震える。
 彼の指がある部分を押し上げた瞬間、頭の中が真っ白になった。
 徐々に視界がぼやけて、涙が零れ落ちる。
「此処、か…」
「なに、なに…これ、や、ああ…ッ」
 未知の感覚に戸惑う僕には構わず、凌は容赦なく、そこを突き上げて来た。
 指が引いたかと思えば、直ぐに奥深くまで埋め込まれ、目が眩む。
 無意識に零れ落ちる、自分自身のはしたない声が恥ずかしくてたまらず、顔が熱くなった。

「…き、嫌いだ、こんな…する凌なんか、…く…あっあ…ッ…し…死んじまえ、」
 飼ってやっていると云う言葉が、ひたすら頭の中を駆け巡る。
 ひどく悔しくて腹立たしくて、そしてあんまりにも悲しくてたまらないから、僕は、殺してやると暴言を吐き出した。
 すると、奥で好き勝手に動いていた指が、あっさりと抜かれる。
 その事にほっと息を吐き、安堵したのも束の間で――――。
 腰を掴まれて固定され、熱い何かが入口に押し当てられたかと思うと、それは強引に押し入って来た。
「うあっあぁ…!」
 指とは比べ物にならないほどの圧迫感と痛みが、下肢を襲う。
 歯を喰いしばって目を瞑るものの、休むことなく腰を進められ、激痛に気を失ってしまいそうになった。



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