告白…10

「い、痛い…嫌だ、痛いっ」
「悠樹、ゆっくり深呼吸して力を抜け。云う通りにしないと、いつまで経っても苦しいままだぞ」
 痛みを我慢出来ずに訴えるが、半ば脅すような物言いで返されて、恐怖を抱いた。
 この苦痛を直ぐにでも無くしたくて、言われた通りにしようとするものの、上手く出来無い。
 力を抜けず、再び歯を喰いしばった瞬間、腰を動かされて内壁を擦られ、鋭い痛みが駆け抜けた。

 どうして自分が、こんな目に遭わなければならないのか。
 無理無体な仕打ちと苦痛に耐えられず、僕はとうとう泣き出した。

「う、う…っ、出来な…痛い、痛…いよ」
 格好悪く泣きじゃくりながら訴えると、凌は一度溜め息を吐き、痛みで縮こまっていた僕自身を握り込んで来た。
 反射的に、びくりと身体を震わせたものの、彼は構わずにそこを揉み始める。
「は…、あ…っあ、」
 優しい手付きで先端を撫でられ、上下に擦られて、愉悦が再び押し寄せた。
 それと同時に浅く、緩い抜き差しを行なわれ、苦痛と快楽に苛まれる。
 しかし、徐々に快楽の方が優位に立ち始め、やがて痛みが完全に薄れた頃
 凌はまるでそれを見抜いたかのように、扱く速度を上げながら腰をぐっと突き入れた。

「っあ、んん――…ッ」
 目の前が一瞬真っ白になり、僕は身体を仰け反らせながら吐精してしまう。
 腹上に白濁を飛び散らせ、びくびくと痙攣していると凌は低い声音で笑い、休む間もくれずに荒々しく突き上げて来た。
 達したばかりでは、あまりにも辛すぎる快楽に喉を震わせ、身悶える。
「や…も、いやだ、…は、ぁ…っうあ、あ…!」
 内壁を激しく擦られ、巧みな動きで掻き回されて咄嗟に、縋り付くようにして相手の肩を掴む。
 すると凌は再び喉奥で笑い、猛った雄で内部を抉りながら、僕の性器の先端も強く擦り上げた。
 意識が飛びそうなほどの、強烈過ぎる刺激に涙が溢れて、泣き止む事も出来ない。
 前と後ろを同時に攻められ、おかしくなりそうなほどの強い悦楽に、次第に恐怖感が強まって僕は首を横に振った。

「やあぁ…っや…い、嫌だ、…ヒロ兄ちゃ、助けて、恐い…っ」
 息を切らし、泣きじゃくりながら兄を呼ぶと、凌が大きな舌打ちを零す。
「浩樹を呼ぶな。悠樹、お前を抱いているのは俺だろう、俺を呼べ」
 苛立った声を掛けられたが、僕は慣れない快楽が恐くて堪らず、かぶりを振りながら何度も兄を呼んだ。
 凌はもう一度大きな舌打ちを零し、唐突に、僕自身の根元をきつく握り締めた。
 小さな悲鳴を上げて僕は痛みに顔を歪めたが、彼の指で表皮を擦られると、甘い疼きが身体の奥から込み上げる。

「俺を呼べないなら、ずっとこのままだぞ。いいのか、」
 低い声音で、だけど優しい物言いで脅されて、くらくらした。
 どうするんだ、と甘い囁きで追い討ちを掛けられると、僕の中で、何かが音を立てて崩れ落ちてゆく。
「し、凌…っあ、…凌…ッ」
「…いい子だ」
 凌が優しい声音で囁いて、まるで褒めるように頭を撫でてくれる。
 たかがそんな事ぐらいで胸が熱くなり、僕は泣きじゃくりながらも彼の名を、何度も口にした。
 奥深くまで貫かれ、乱暴な突き上げを繰り返されて身体を揺さぶられると、殆ど無意識に彼の首へしがみつく。
 こんなひどい事をしている相手なのにと一瞬思うけれど、気持ちが好すぎて、直ぐに何も考えられなくなる。
 何が何だか分からなくなって、僕は泣きながら、彼の肌に爪を立てた――――――。




 あの日から凌は何度も、僕が兄に恋心を抱いている事も全て承知の上で、僕を抱いた。
 最初の内は抵抗を繰り返して逃げようと暴れもがいたけれど、力の差は圧倒的だった。
 諦めずに、何度も抵抗する僕を、凌は決して殴ったりはしなかったが、逃がしてくれる事も無かった。
 何度も抱かれてゆく内に、彼がくれる快楽に溺れ、僕はいつしか抵抗する事をやめて
 今では自分から相手を誘うような、はしたない人間になっている。
 初めて犯された日のことを思い出すと、徐々に欲情は強まって、僕は一度下唇を舐めた。
「ねぇ、凌…」
 少し緩められているネクタイへと手を伸ばし、それを軽く引き寄せる。
 甘い声色で相手を呼ぶと、彼はゆっくりと視線を合わせて来た。
 鋭い眼差しが僕だけに向けられる、この瞬間が、好きで堪らない。

「少し休憩して……セックス、しようよ」
「浩樹に惚れてる癖に、他の男を求めるのか…」
 嘲笑とも呼べる笑みを浮かべて、凌は呆れ口調で言葉を放った。
 その上、軽い溜め息まで吐かれたものだから僕は少しだけ、むっとする。



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