嘘…6

 すかさず腕を振り払えば、思ったよりも呆気なく、海藤の腕が離れた。
 悠樹は悪びれた様子も見せずに立ち上がり、掴まれて熱くなった箇所を指でなぞりだす。
「掴み過ぎだよ。ほら、見て…痕がくっきり残ってる」
 渋面の相手を見下ろしながら声を掛けるが、返答は無い。
 数秒ほど視線を注いだ後、悠樹は静かに足を進めて海藤に近付き、隣へと腰を下ろした。
 その瞬間、腕を掴まれ、強い力で引かれる。
「悠樹…今度こそ本当だろうな、」
「そうやって確認する所とか、かわいくて堪らない。さっき云ったのは女じゃなくて……凌のことだ、」
 海藤の胸へ顔を埋めながら素直に答えると、きつく抱き締められる。
 それだけで下肢に熱が溜まってゆくのが判り、悠樹はもどかしげに淡い吐息を零す。

「…凌、……好き、」
 もう一度告白すると、不意に身体を離される。
 どうしたのかと訝るよりも先に、海藤は首筋へ顔を埋め、噛み付くように口付けて来た。
 そのまま、早急にシャツの釦を外され、前を開かれる。
 露わになった胸元にまで口付けを受け、悠樹は擽ったそうに身を捩った。
「本当に此処でするつもり? …汚れたらどうするの、」
「その時は、その時だ。俺は今直ぐお前を抱きたくて、堪らない。」
 海藤の髪を撫でながら問うと、熱の篭もった声音が素早く返って来る。

「……今の凌、飢えた獣みたいだ」
 くすくすと笑いながら囁き、悠樹は不意に、下肢へ手を伸ばして自分のバックルを外し始めた。
 自ら下衣を脱ぐつもりだったが、すかさず片腕を動かした海藤に剥ぎ取られてしまう。
 思い通りにいかなかった事が気に食わず、悠樹は不満げに、相手を睨んだ。
 が、下着の上から性器に触れられてしまい、咄嗟に目をつぶる。
 ゆっくりとそこを揉み込まれると、悠樹の顔は徐々に紅を帯び、息も弾んでゆく。
 反応を窺っていた海藤は思わず、低い笑い声を立てた。
「相変わらず、感じ易い身体だな。久し振りだから余計に…か?」
「んっ…煩、ああっ」
 下着の中へ忍び込んで来た手が、直に性器を握り込む。
 それだけでも刺激が強いのに手を上下されては堪らず、悠樹は咄嗟に、相手の髪をきつく掴んだ。
 しかし手の動きは止まらず、急速に悠樹を昂ぶらせてゆく。
 扱かれる度に、くちゅくちゅと濡れた水音が響き、羞恥心をひどく煽られた。

「凌、…やばい、何か、はあっぁ…拙いかも…」
「…ああ、此れは拙いな。溢れ過ぎだろう、」
「んあっ…ぅう、ん…!」
 敏感な亀頭を執拗になぞられ、背筋を突き抜けてゆく快感に、唇を咬んで耐えた。
 感じすぎている所為か、普段ならまだ有る筈の余裕が、早くも無くなり掛けている。

「ね、凌……ねえ…、」
 もどかしげに腰を揺らし、我慢出来なさそうに瞳を濡らしながら、ねだりだす。
 主導権が漸く此方にやって来たと実感し、気を良くした海藤は薄く笑いながら、悠樹の下着を脱がしてやった。
 少し身体を離した後、己もスーツの上着だけを脱ぎ、それを畳の上へ無造作に放り捨てる。
 続いてネクタイを肩に掛けると、悠樹の両膝を掴んでぐっと割り開き、身体をずらした。
 濡れそぼった性器へ顔を近付けた海藤は、下方へ伝い落ちるほど蜜が止め処なく溢れ出している様を見て、喉奥で笑い出す。
 それを耳にした悠樹は、何を笑っているのかと眉を寄せ、訝った。
 目を向ければ、海藤の鋭い双眸と視線が絡み合う。
「悠樹、見てみろ。こんなに濡らして…いやらしいな、」
 掛けられた言葉と、視界に入った自身に羞恥をひどく煽られ、身体が熱く震える。
「そ、そんなの、凌の目の錯覚だ…」
 逃げるように顔を背けた悠樹が、負け惜しみを口にした。
 素直じゃないなと半ば呆れながらも、海藤は躊躇い無く、濡れそぼった性器へ舌先を這わせた。
 蜜を拭うようにして根元から舐め上げ、くびれを吸い、裏筋を舐ってじっくりと甚振る。
 カリ部分を舌先で突くと、悠樹の腰がびくん…と震えた。

「んっんッ…いい…、もう、い…達きそ…」
 弱い箇所を的確に攻められて全身が汗ばみ、高みへ駆け上がってゆく。
 息も切れ切れに訴えた瞬間、海藤は唐突に愛撫を止め、顔を上げた。
「凌……なん、なんで…」
 あと少しで到達出来そうだったのにと、責めるように問う。
 けれど海藤は何も答えず、悠樹の胸元を撫でた後、固くなった乳頭を捏ね回した。
「はぁ…あ、…し、凌…? …ッああ…!」
 快楽に震えながらも海藤を呼んだ瞬間、乳頭を抓られ、悠樹の身体が跳ねる。



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