嘘…7

「セックスの回数を減らしたのは…何が原因だ、」
 痛みで涙を滲ませた悠樹に謝る素振りも、悪びれた様子すら海藤は見せない。
 指の動きは止めずに、乳頭を指先で転がし、弄んだ。
「どうした、早く答えろ。」
「…さあ、…あっ、ぁ……な、何で、だろうね」
 短くも迫力のある低い声音を放たれるが、悠樹は僅かに口元を緩め、はぐらかす。
 強情な姿に、海藤は大きく舌打ちを零した後、性器の根元をきつく握り込んだ。
「い…っ…、し、凌…」
 痛みに顔を歪めながら戸惑いがちに此方を見て来る、何処となく不安げな姿に、海藤はひどくそそられる。
 塞き止めたまま先端へ舌を這わせ、蜜を溢れさせている窪みを舐り、喉奥で笑う。

「答えないなら…ずっとこのままだな」
「む、…かつく。凌の、癖に…っあ、んン――…ッ」
 反抗的な科白が耳に届くと、海藤は亀頭を口に含み、強く吸い上げた。
 突き抜けた鋭い快楽に身悶えるが、塞き止められたままでは達することも出来ず、楽になれない。
 爪先を震わせ、咄嗟にかぶりを振ると、海藤は一度口を離して顔を上げ、今度は乳頭を舌で舐め上げた。
「どうするんだ、悠樹。敏感なお前に、此れは辛いんじゃないのか?」
「ぅ、ぁあ…ッん、んん…っ」
 ちゅっと音を立てて吸い、時折やんわりと咬みながら反対側も指でなぶって来る。
 乳頭を摘まれて軽く捩られると、痺れるような疼痛に苛まれ、悠樹の腰はまるで誘うように揺れ動いた。
 じれったくも甘い愉悦に侵されて、性器がずきずきと、ひどく疼く。

「……す、好きって、言いそうだった、から…」
 やがて観念したかのように、小さな声を零す。
 海藤は愛撫の手をぴたりと止め、呆れ顔を見せた。
「まったく、お前はどうしてそう、変なところで意地を張るんだ…」
「い、意地じゃなくて計略だよ……んっ」
 塞き止めていた指を緩めると、悠樹は反射的に目を瞑り、身体を震わせる。
 その様子を愛らしく思いながら喉奥で笑い、性器へ顔を寄せ、再度亀頭を口に含んだ。
 今度は焦らすことなく奥深くまで呑み込み、頬を窄めて吸い上げながら、引き抜く。

「ああっ…んっ、凌、出る…も、出る…っ」
 数回それを繰り返されただけで、絶頂感は直ぐに押し寄せて来た。
 背を丸め、海藤の髪を掴んでかぶりを振りながら訴えると、更にきつく吸い上げられる。
 一瞬で目の前が真っ白になり、大きな声だけは上げまいと唇を咬み締め、そのまま呆気なく達した。
 口腔へ放たれた白濁を躊躇い無く呑み干し、海藤は上目遣いに悠樹を見つめる。
 相手はぐったりと脱力し、まるで陶酔しているかのように、息を弾ませながら瞳を閉じていた。
 唇を咬むのも止めていることに気付くと、胸中で笑い、吐精を終えたばかりの性器を再び吸いだす。
「っあ、ぁあ――っ…」
 唐突な、強烈過ぎる刺激に嬌声を上げ、悠樹は咄嗟に海藤の頭へしがみついた。
 余滴を残すまいと、きつく吸い上げれば、その身体はびくびくと痙攣する。
 快楽に悶え、涙を零しながらはしたない声を上げている姿に欲情し、海藤はすぐさま口を離した。

「悠樹……好きだ、」
 細身の身体を畳の上へ丁寧に倒してやりながら、低く、熱の篭もった声音を放つ。
 覆い被さると、悠樹は息を整えながらも嬉しそうに口元を緩め、海藤の広い背へ手をそっと回した。
「ねえ、ずっと訊きたかったんだけど…僕のことをいつから好きになったの? 初めて会ったときから?」
 背を撫で回した後、肩に掛かったネクタイを指に絡め、弄ぶ。
 興味津々と云った様子で尋ねると、海藤は緩やかにかぶりを振って見せた。
「いや…最初の頃は、浩樹からの預かり物としか思っていなかった。」
「じゃあ、いつ好きになったの。僕は我儘だし、優しくもない。好かれるところなんて一つも無いと思うけど、」
「…自分が幸せになる事よりも、浩樹の幸せを願っていただろう。その純粋さが、魅力的に見えた」
「純粋、ねぇ…。僕には似合わない言葉だ、」
 海藤の言葉が照れくさく、悠樹はつい、減らず口を叩く。
 しかし表情はひどく嬉しげで、邪気の無い笑みが浮かんでいる。
 魅力的だと心から思える笑顔に、視線が釘付けになって中々目が離せず、海藤は微苦笑した。
「それに…生意気なだけかと思えば、急に素直にもなる。目を離すのが勿体無く思えるほど……今は、お前に夢中だ」
「凌…その科白、くさい。」
 臆面無く言ってのける海藤に、悠樹の方が恥ずかしくなり、咎める。



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