『 お仕置き 』

 テーブルを挟んだ真向かいに居る相手をチラリと見遣り
 僕は落ち着かないように身体を少し動かした。
 どうしてこうも、この人は魅力的なんだろう、と思う。
 着こなし上手と云うのだろうか…浴衣が見惚れるぐらいに、良く似合っている。

 僕は彼の浴衣姿が珍しく、ついチラチラ見てしまうけれど
 その魅力的な姿を目にすると、直ぐに視線が逸れてしまう。

 だって…わざと着崩しているのか分からないけれど、良く見える鎖骨とか
 形が良くて男らしいし…
 ボディビルダーみたいじゃないけれど、その筋肉質な身体は逞しくて
 見ているだけでドキドキしてしまう。
「…んっ、」
 身体がピクリと反応して、息が乱れる。
 彼に見惚れてるだけでこんな反応なんて普通は起きないけれど……
 今の状態では、仕方の無い事だった。

「葵、顔が赤いが…どうかしたのか、」
 理由を分かっている癖に、彰人は意地悪くそう云って、熱燗を猪口に注いだ。
 目を眇めて僕を見つめながら、手酌しているその姿さえも魅力的で……堪らない。

「あ、彰人…もう…」
 呼吸を乱しながら小さな声で訴えるけれど
 彰人は愉しそうに僕を眺めているだけで、何もしてはくれない。
 きちんと姿勢を正しながら正座しているつもりでも、次第に身体の力は抜けてしまう。
 けれどそれを叱るように、彰人はテーブルの上に置かれていた小さなリモコンへと手を伸ばした。

「ゃっ、あ…ッぁあ…!」
 その瞬間、内部の異物が振動を強め、モーター音も更に大きくなり、反射的に背筋が伸びる。
 すると、直ぐに振動は微弱なものに変わり、僕は縋るように彰人を見つめた。
「も…許して、彰人…」
 かれこれ1時間以上は、遠隔操作型の玩具でこんな行為を続けられていて、もう限界だった。
 何度謝っても彰人は許してくれないし、その上、僕の性器の根元部分には
 射精防止用のリングが付けられているしで…かなり辛い。

 けれど、僕が彰宏の手作りの飴を呑み込んでしまったのが悪いんだから、文句なんて言えない。
 あれ程、人から貰った物を気軽に食べないようにと、彰人にきつく云われていたのに……
 だから彰人は、実はかなり怒っている。

「もうそろそろ良いか……おいで、葵」
 テーブルの上に置かれていた腕時計をチラリと見遣りながら
 彰人は口の片端を上げるだけの笑みを見せた。

 うぅ…何でそんなに魅力的なの……。

 異物は微弱な振動をまだ続けている所為で、上手く歩けない。
 その上、先走りが内股を伝っているから、何だか気持ち悪いしで…歩くのにとても苦労した。
 それでも彰人が楽にしてくれるんだと思って、僕は期待しながら彼の元へと向かう。

「彰人…、も…駄目…」
 そう言いながら彼の隣に腰を下ろそうとするけれど
 急に彰人は僕の腰へと腕を回して抱き寄せ、その膝上へ乗せてくれる。
 向き合う体位の所為で、彰人の筋肉質な胸元や素肌を目にして、興奮は更に高まってしまう。
「こんなに濡らして…いやらしい子だ」
「ぁ…」
 徐に浴衣の中へ彰人は手を滑り込ませ、ぐっしょりと濡れている僕の性器を撫で上げる。
 その刺激だけで身体を震わせて、限界を訴えている僕を、彰人は満足そうに見つめていた。
「ゃっ…彰人…」
 ねだるように名前を呼ぶけれど、彰人は一向に僕の中へ挿入してくれる気配は無くて…。
 それ所か、濡れてしまっている内股を僕に思い知らせるみたいに、撫で上げて来る。
「彰…、ひっあぁ…ッ!」
 もう一度彼の名を呼び掛けた途端、内部の異物の振動が強まり、快感に背が反れた。

「どうだ葵…気持ち好いか、」
 喉の奥で笑いながら尋ねて来る彰人の言葉に、何とか首を縦に振って答える。
 すると彰人はとても満足そうに目を眇め、性器の鈴口へと軽く爪を立てた。
「ぃっ、あっぁ…!やだ…っん、あぁっ」
 痛みに眉を寄せるけれど、実は痛いのも気持ち好かったりして…。

 立派にマゾの道を進んでいるのは、絶対彰人のお仕置きの所為だと思う。
 昔っからこう云う風に僕を苛めて来たんだから、絶対彰人が悪い。
 悪い…んだけど、そんな事を口にしたら、いつまで経ってもイかせて貰えないに決まってる。

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