Sweet Valentine Night…10
「あァ…っん、ンぅ…ッ」
あっさりと奥まで呑み込み、舌を絡めてやると、葵は爪先を震わせて悶えた。
快感に耐えるように指の背を噛むが、きつく吸い上げられると、射精感はより一層濃くなる。
「んや…ッ、も…ぁっあぁ…ッ!」
達くと告げる間も無く、葵は甘い声を上げて吐精してしまう。
嫌な顔一つせずに白濁を飲み下した彰人は、ゆっくりと口を離し、
まだ身体を震わせて脱力している葵を支えるように抱いた。
「葵、悪い子だな。私が良いと云うまで、達ってはいけないと教えた筈だろう、」
「ぁ…、」
はっとした葵が身体を離そうとするよりも前に、彰人は葵の身体を軽々と抱き上げる。
そのままソファから離れて足を進める彰人を見上げ、怒らせてしまったのかと
内心焦っていた葵は、唐突に広いベッドへと転がされた。
シーツに沈み、不安げな表情を浮かべる葵の眼に、ようやくスーツの上着を脱ぎ捨てた彰人の姿が映った。
明かりを落とした室内は、橙色の明かりが室内を淡く照らしている。
近くの椅子に無駄の無い動作で上着を掛け、ムードの有る空間の中で
ベスト姿のまま、ネクタイを慣れたように緩める姿は、惹き付けられるものがある。
その上、前髪をゆったりと掻き上げる姿が、あまりにも魅力的で―――――。
「彰…人、お願い、もう挿れて…」
欲を煽られた葵は恥じらいながらも、切羽詰まったような声を響かせた。
ベストも脱ぎ、腕時計を外し掛けていた彰人は横目でチラリと相手を一瞥し、軽く笑う。
「まだ慣らしてもいないだろう、」
余裕がたっぷりと有るような彰人の言葉に、葵は少し寂しげに眉根を寄せる。
―――――早く繋がりたいと思うのは、自分だけなのだろうか。
そう考えると切ない想いが込み上げて来て、葵は暗い考えを振り払うように眼を伏せた。
「じゃあ、僕も咥えたい」
「……珍しいな、」
葵の意外な発言に驚き、僅かに片眉を上げた彰人はゆっくりとした足取りで、葵の待つベッドへと近付いた。
サイドテーブルの上へ物音も立てずに腕時計を置き、ワイシャツの上の釦をゆっくりと外す。
そんな何気ない動作でも、彰人がやるだけで魅力的に見え、葵はつい見惚れてしまう。
「なら、お言葉に甘えさせて貰おうか。」
スプリングの軋む音が響き、ベッドに乗って来た彰人が
片手に何かを隠し持っている事に、葵は気付かない。
傍に腰を下ろした彰人の顔を少し緊張した様子で見つめていたが、
眼を細く眇めて見つめ返されると、慌てたように彰人のスラックスへと手を掛ける。
両手を使ってベルトを外し、スナップも外した所で、葵の手は一度止まった。
その様子に、彰人は怪訝そうな眼差しを向けるが、葵はジッパーに視線を注いだままで微動だにしない。
葵の名を呼ぼうと口を開き掛けたが、それよりも早く、葵は彰人の股間へと顔を近付けた。
ジッパーを噛んで歯で挟み、緩やかに下ろし始めた葵の姿に、彰人は肩を揺らして笑う。
「葵、お前は何処でそう云う事を覚えて来るんだ、」
観賞するように葵をじっくりと眺めると、強い視線が恥ずかしいのか、
それとも掛けられた言葉が恥ずかしいのか、葵の顔は更に赤みを帯びる。
「…エッチな本とか、」
下ろしきったジッパーから口を離した葵は、云い難そうに小さめの声で答えた。
「彰人にもっとドキドキして貰いたいし、満足させてあげたいから、そーゆーので勉強して…」
「成程…随分と可愛い事を云ってくれるな」
微笑みながら彰人が言葉を返すが、羞恥心からか葵は目線を上げられずにいた。
手は休まずに彰人の雄を取り出そうと動き、それが形を変えている事に気付くと、自然と視線は上がる。
「彰人、少し勃ってる」
「…自分の恋人にあんな良い声で啼かれて、興奮しない訳が無いだろう、」
臆面も無く云う彰人に羞恥と喜びを感じ、ゆっくりと目線を落とした葵は、取り出した雄に唇を寄せた。
半勃ち状態の先端に軽く口付け、舌でゆっくりと舐め上げる。
先端を丁寧に何度か舐めてゆく内に、凶器のような赤黒いそれは上を向き、大きさを増した。
「葵、咥えるんじゃなかったのか?」
完璧に勃ち上がった、目の前の大きいソレに思わず怯み掛けた葵へ、揶揄混じりの言葉が注がれる。
怯む自分を心中で叱咤しながら、葵は上目で彰人を見遣った。
「い、云われなくたって、今からやるつもりだったのに…」
視線を戻し、この大きいものをちゃんと根元まで口に含めるか、判断するように雄をまじまじと見つめる。
フェラは今まで何回かしたが、この怒張した雄を間近で見る度に、以前よりも大きく思えてしまう。
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