Forget me not…14

 熱くて逞しい彼自身で内壁を擦られ、重点的に最感部分を刺激されると、頭の中は真っ白になってしまう。
「んゃっ、ひ…ッ、あっあぁ…彰人、好き…大好き…っ」
 甘ったるい声を上げて、自分からも腰を振りながら、何度も好きだと告白を繰り返した。

 ―――――――お願いだから、捨てないで。
 そう切に願いながら、離れないように彼にしがみついて、射精感に身体を震わせる。
 いつもなら、我慢しなさいとか、彰人の言葉が掛かって来るけれど、掛けられた言葉は……
「私には…お前だけだよ、葵」
 耳元で甘く囁かれて、入口ギリギリまで熱い塊を抜かれて…
 脈打つ自身を感じた次の瞬間、勢い良く最奥を突き上げられて、目の前が真っ白になる。
「ゃ…っあ、あ…ッぁあ――っ…!」
 はしたない声を高らかに上げて全身を痙攣させながら射精し、
 同時に、最奥へと彰人の熱い液体が大量に勢い良く放たれるのを感じた。
 男らしく眉根を寄せ、小刻みな痙攣を繰り返しながらまだ射精を続けている、カッコイイ彰人。
 こんな彰人は……僕だけが見れるんだよね?
 切ない気持ちを抱きながら、心の中でそんな疑問を浮かべた。
「葵…、」
 気遣うように名前を呼ばれたけれど、彰人と二人で行為後の余韻に浸る間も無いままで…
 僕の意識は、途切れてしまった。









「葵…、葵…」
 誰かに肩を軽く揺すられて、声を掛けられる。
 彰人の声じゃないって事は分かったから、残念に思いながら目をうっすらと開けた。
 ぼんやりとした視界でも、声の主が僕の顔を覗き込んでいるのが何となく分かる。
 何度か目を擦って、瞬きを数回繰り返して、もう一度その人物を見た。
「彰…宏」
 一番会いたくない人だった。
 逃げるべきか迷っていると急に顎を掴まれて、口を開かされる。
「葵…口開けて」
「な…ッ!?」
 開けて、と言っている割には強引に開かせといて、何を言っているんだろう…
 なんて思っている間に、口の中へ何かを入れられて、思わず飲み込んでしまう。
 小さな塊なような物体を飲み込んでしまった僕は、何を飲み込んだのかが分からない為、恐々と彰宏を見つめる。
「ただのちっちゃい飴だよ。甘かっただろ?」
「の、飲み込んじゃったから…味なんて分かんな…っ」
 咳き込みながら答えると、彰宏は軽く「残念だね」と言って来る。
 何なんだろう…新手のイヤガラセとか?
 まだ少し咳き込んでいると、彰宏はまじまじと僕を見つめて来るものだから思わず…
「な、何?」
 なんて、しどろもどろになりながら尋ねてしまう。
「んー、何か変わった事無い?」
「変わった事って…何言ってるの?」
 彰宏の言動が不可解過ぎて、思わず眉を顰める。
 そんな僕を見て軽い溜め息を吐くと、彰宏は残念そうに「失敗か…」なんて呟くものだから…
 もしかしてさっきの飴は、何か変な物だったのだろうか、と不安になる。
「さ、さっきのって…ホントに飴なの?」
「そう。俺が作ったヤツ」
「え…、」
 手作り、と耳にして何だか嫌な予感がした。
 男性が作ってくれるお菓子なんかは、昔から食べるとろくな目に合わないのだ。
 幼い頃、知らないオジサンに貰ったお菓子は変なクスリが入っていたし。
 それだけならまだ可愛げが有るけど…
 酷い話、最近じゃあ精液とか髪の毛とか…本当に気味が悪いモノが入っていたりする。
 取り敢えず、幼い頃にクスリ入りの変なお菓子を食べてからは、
 手作りのお菓子は貰っても食べないようにしていたのに。
 と言うか、食べないようにしなさいと、彰人から厳しく言われたのに。
 もし彰宏の手作りを食べちゃった事がバレたら……キツーイお仕置き決定…。
 なんて事を考えて溜め息を吐いていると、彰宏は軽く首を傾げながらにこやかに微笑んで来た。
「そう言えば、どうしてこんな所で寝てたの?」
 彼の言葉に、こんな所とは何処だろう…と、ぼんやり考えた。
 僕は確か、彰人とソファの上で――――思い出すと身体は熱くなって、鼓動は速まってしまう。
 きっと顔も赤くなってるかも知れない。
 一人で焦りながらも、自分が座っている所が、彰人が仕事をしている時に良く座る椅子だという事に気付いた。
 しかも、彰人のスーツの上着が身体に掛けられていて、僕はちゃんと服を着ている。
 さっき彰人に抱いてもらったのは、夢だったのかな?
 なんて一瞬思ったりするけれど、ソファに見慣れぬシーツが
 掛けられているのを目にすると、夢じゃないんだと分かった。

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