Forget me not…18
嫌な予感と不安が強すぎて耐えられず、もう一度彰人に視線を戻す。
「ほ、本当なの?」
「そうだと云ったらどうする、」
「う…嘘でしょ…?」
「さあな…彰宏に訊いてみたらどうだ?詳しく教えてくれると思うが、な。」
喉の奥で笑いながら語る彰人が、まるで別人みたいだ。
彰人はもう、僕の恋人じゃなくて…僕の父親でも、無くなってしまうのかな。
「僕は…僕は、す…捨てられる、の…?」
今にも泣きそうな、震えた声が自分の唇から零れ出て、縋るように彰人を見つめた。
けれど彰人はそんな僕から視線を逸らし、馬鹿にしたようにもう一度鼻で笑って見せる。
「捨てる?そうだな……要らないな。」
――――――要らない。
それは…それは、必要とされていないって事で、
つまり…彰人は、もう僕を……。
そんな当たり前の事がグルグルと回って、彼に言われた言葉が上手く理解出来ずにいた。
要らない、なんて…とても簡単な言葉なのに、僕には全然理解出来なくて。
震えた手で膝に掛けられた上着を掴んでいると、急に手首を掴まれた。
顔を上げると、彰人が至近距離で僕を見ている。
捨てないで、って縋れば、彰人は捨てるのをやめてくれるだろうか。
嫌わないで、と泣きつけば、また愛して貰えるだろうか。
なんて事を考える自分の女々しさに、下唇を噛み締めた。
「時間が無いが…最後に愉しませて貰おうか」
一瞬何を言われたのか分からずに、ぼんやりと彰人を見つめると、
急に掴まれていた手首を引かれて椅子から離される。
「い…たっ」
そして半ば乱暴な手付きで、近くに有った綺麗な机の上へと頭を押し付けられ、痛みに眉を寄せた。
こんなに乱暴な扱いを受けたのは、初めてかも知れない。
だから…本当に僕はもう、彰人から必要とされていないんだと、痛いぐらいに理解出来た。
頭を抑え付けられているから、振り向いて彰人の顔を伺う事も出来無い。
抑えられている頭が痛いけれど…それよりも、胸が痛い。
涙を必死で堪えていると急に、ズボンを下着ごと脱がされ、見っとも無く主張している自身を握り込まれる。
「坂井に欲情したのか…?」
「違…っ」
「どうだか…お前は淫乱だからな」
既に勃ち上がっている事に気付かれ、更に誤解までされてしまう。
冷たく言い放つ彰人の言葉が痛くて…それでも泣いたら
自分が惨めに思えそうで、涙を堪える為に下唇を噛み締めた。
悲しくて辛い筈なのに、彰人に握り込まれている性器は、
快感が欲しいと訴えているように濡れていて…どうしようも無い。
かと言って、僕が勝手に飴を呑み込んでしまったんだから、原因の彰宏を責める事も出来無い。
「お願いだから…父さん、やめて…」
捨てられたのだと分かっていても、彰人をそう呼んでしまう自分が悲しい。
震えた声でそう訴える僕に彼がした事は…蕾へと熱い塊を当てがう事だった。
信じられない行動に驚いて慌てて腰を逃がそうとするけれど、
性器から手を離され、その手でいとも簡単に押さえ付けられてしまう。
「ゃ…やだっ、やめて…ッ」
慣らしもしないのに入れるなんて、痛いに決まってる。
どうしてこんなに酷い事を、平気でしようとするのか分からなくて、涙が滲んだ。
これが……もう不必要な僕への、仕打ちなのか。
「今日一度したんだ…平気だろう?」
平気な訳が無いじゃないか、と言うように僕は首を振ろうとしたけれど、
頭は押さえ付けられているから動けない。
「やだ、やだよ…っ、恐いッ」
「黙っていろ。」
冷たい言葉が上から降り掛かって来て、熱い塊はゆっくりと、
けれど力強く内壁を押し広げてぐいぐいと侵入して来る。
「ひ…ッ!ゃ、痛いっ、いた…ッ!」
彰人の熱い先端で内側から無理に押し広げられ、痛みで涙が零れた。
彼が此処までする程、もう僕を嫌っているのかと思うと、胸が痛くて。
「ぅ…うっ、ひっく…うぅ…」
「キツイな…」
忌々しそうに舌打ちを零す彰人の前で、もう高校生だと云うのに見っとも無く、子供みたいに泣きじゃくってしまう。
僕が泣いても気にしないと言うように彰人は腰を進めて、とうとう最奥まで侵入して来た。
「葵、動くぞ…」
「ひっく、ひ…、ぅ…や、やだ…っ」
痛いのに、彰宏が作った飴の所為で自身は萎える事も無くて、それが……更に遣る瀬無い。
やだと言っているのに関わらず、彰人は構わずに動き出した。
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