the mating season…02
それは少し前の誕生日に社長専属秘書の坂井がくれたもので、淡い薄碧色のそれを僕はとても気に入っている。
高そうな物に見えるけれど、坂井が云うには全然高くないとか。
一万ぐらいの品物なのかと思うけれど、高校生でバイトもしていない僕からすれば、その値段さえも高く感じる。
「葵…、」
手に取った腕時計をはめようと集中した瞬間、耳元で吐息混じりに名前を呼ばれた。
この低く甘過ぎる声には毎度ながらゾクゾクしてしまい、一瞬で頭の中は真っ白になってしまう。
「んゃ…っ」
静止していた僕の耳に、彰人が軽く息を吹き掛けて来た所為で、甘い声が口から漏れる。
それだけでは終わらず、耳朶を咬んだり、舌先でゆっくりとなぞるように舐め上げられ……。
「ぁ…っあ、」
身体は震えて、それだけで足の力が抜けそうになっちゃうしで。
反応がいつもより過激なのも、発情期の所為。
「…いつもと違って、大人しいな」
耳元でクスクスと笑いながら、揶揄するような言葉を放たれても、
反論なんて出来る余裕も無いしで、本当に質が悪い。
いつもだったら、学校に行くんだと必死で抵抗して……でも結局、彰人に捕まっちゃうけど。
「父さ…、」
甘く掠れたような自分の声が、まるで誘っているようで、かなり恥ずかしい。
彰人はそんな僕の身体を向き合うような形で反転させ、抱き締めてくれる。
相手の腕の感触も体温も、うっとりする程気持ち好くて……
学校なんて、どうでも良いと思っちゃう自分が居たりする。
彰人の服を掴んで縋るように彼を見上げると、満足そうに目が細められた。
その表情を見ただけでゾクゾクしちゃうのって、結構ヤバイかも。
「あっ」
急に肩を押されてバランスを崩し、後ろのベッドの上へと転がされた僕の上に、
スプリングを軋ませながら彰人が乗って来る。
真上からこちらを見下ろしている彰人の姿に、単純な身体は直ぐに熱を上げ、興奮が高まるのを感じた。
何でホント、この時期の僕ってこんなに大人しい上に、過敏で淫乱なんだろう。
恥らうように顔を赤らめながら目なんて逸らしちゃって…そんな自分の姿の方が、かなり恥ずかしい。
綺麗な指が僕の制服の釦を、神業とも云えるスピードで、手慣れたように外してゆく。
「そうやって大人しくされるのも……堪らないな、」
「ひぁっ、ん…んッ」
喉の奥で低く笑いながら、彰人は露わになった僕の胸元へと手を伸ばして、慣れたように乳首を弄って来る。
固く尖った突起は彼の指先でこね回され、弄ぶように転がされ、それだけで頭の中は真っ白になっちゃう訳で。
身体は既に我慢なんて出来無い状態になってしまい、縋るように彰人の首へと両腕を絡めた。
「彰人…っ、は…はや、く…」
興奮が強すぎるのか、舌が巧く回らない。
焦れったさに身を捩ると、彰人は宥めるように頬を撫でてくれて、唇に軽いキスをくれた。
欲情が抑え切れず、僕はつい、彰人の冷たい唇を舐めてしまう。
しかもそれだけでは物足りず、自ら相手の口腔へと舌を滑り込ませたりとか、
本当にこの時期の僕って積極的になっちゃう訳で。
「ん…ぅん…っ…」
鼻に掛かったような自分の声に羞恥を感じながらも、舌を絡め、彰人の舌にきつく吸い付いた。
その間も、彰人の手は器用に僕の乳首を弄っていて……ほんと、このお父様と来たら、余裕たっぷりってカンジだ。
「も、だめ…彰、人…ッ」
我慢が出来ずに唇を離して彰人の片手を掴むと、僕は既に勃ち上がっている自分の性器へと、彼の手を導いた。
切羽詰った自分の声が、何だか情けないけれど、余裕なんて皆無に等しい訳で。
「……寝顔も堪らないが、こっちの顔の方が好ましい、」
揶揄するようにクスクスと笑いながら低く甘い声で囁いて、
彰人は布越しに僕の性器をゆっくりとなぞり上げる。
その感触だけでイキそうになっちゃうのって、かなりヤバイんじゃ…。
快感で身体を震わせている僕を見下ろしながら目を細めた彰人は、片手で僕のズボンのベルトを外しに掛かる。
器用に片手でベルトを外し、しかもズボンも下着も脱がせられる彰人って、凄いと思う。
脱がしのプロと云うか何と云うか……ちょっぴり感心しちゃう。
「はぁ、ぁっ…あ…ッ、ね…寝顔?」
理性が飛びそうなのを必死で堪えながら、彰人を見上げて問うと、彼は口角を上げるだけの笑みを浮かべる。
その表情でさえも魅力的で、内部が疼く程に欲情しちゃう僕って……何てはしたないんだろう。
「起こすのが勿体無く思える程……かわいい寝顔をしていた、」
低い声でそんな言葉を云われてしまったら、起こしてくれなかった事なんて、もうどうでも良くなってしまう。
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