the mating season…15
「…また、妙な事を考えているのか?おまえは…、」
「だって…辞めさせないなんて、彰人…変だし…」
まるで鳴瀬を解雇して欲しい、とでも云うような自分の発言に、自分で驚いてしまう。
慌てて自分の口を塞ぐけれど、彰人は僕の発言に対し、呆れたような溜め息を漏らした。
「解雇して欲しいのか?どっちなんだ、」
「か、解雇は駄目だよっ、でも…でも、彰人…何か、鳴瀬贔屓って云うか……鳴瀬の事好きなの?」
次第に軽く取り乱してしまい、彰人が不機嫌になりそうな言葉を漏らしてしまう訳で。
案の定、彰人は眉を更に顰め、端整なその顔はより一層不機嫌な色を浮かべて……
雰囲気も何処となく、冷たくて刺々しいものになる。
彰人の機嫌を損ねるのは嫌なんだけど……普段あまり表情を崩さない彼が、
そんな風に色んな表情を僕の前で取ってくれるのは結構好きだったりする。
それに、彰人の顔って本当に美形で、男らしくてカッコイイから……
不機嫌なその表情でさえ、見惚れちゃうぐらい魅力的な訳で。
恋人の不機嫌な表情でさえ好きな僕って、どっかズレてるのかな。
「おまえと云う奴は……全く、どうしてそう云う考えに走るんだ、」
呆れたような溜め息を吐いてから、彰人は整ったハンサムな顔を近付けて……コツンっと軽く、額同士がぶつかり合う。
彰人の顔が間近にある事にドキリとするけれど、何よりも、その行動に胸が高鳴る。
彰人こそ、どうしてそんな……僕がすっごくドキドキしちゃう事をするのさッ、とか云ってみたい。
でもそんな事を云ったら、例えばどんな事だ?みたいな事を訊きながら、エッチなコトをし始めるに決まってるんだ。
それで、こんな事か?とか尋ねて来たり、乱れる僕を見て満足そうに微笑んだり……。
「葵……何を考えているのかな?」
「ひッ…!」
エッチな事をあれこれ考えていた矢先に、彰人がいきなりシャツの上から、乳首を抓って来る。
痛い筈なのにゾクゾクするぐらいに気持ち好くて、身体が震えた。
一気に身体の熱は上がっちゃうし、期待するように彰人を見上げちゃうしで、ホント、発情期の僕って抑制が無い。
「真面目な話をしている最中だと云うのに、いやらしいコトを考えていたんだろう?…いけない子だ、」
「ぁッあぁ…ッん、ごめ…なさ…っ」
そのままシャツの上から敏感な乳首を、指の腹で押し潰すようにグリグリと刺激され、堪らずに首を弱々しく振る。
縋りつくように謝罪を口にすると、不機嫌そうだった彰人の表情は何処となく優しいものに変わった。
「今回の件は……確かに、鳴瀬贔屓になるかも知れないな。」
「え…、」
悲しげな声が自分の唇から漏れると、彰人は指の動きを止め、優しく頭を撫でてくれる。
それでも、彰人はやっぱり鳴瀬のことが好きになったんだと云う疑いは消えず、胸は痛み続けてしまう。
「…いつもより更に乱れるおまえを見れたからな、私は満足だ」
「なっ、な…っ!」
心中では鳴瀬に気が有るのでは無い事が分かって、ホッとするものの、彰人の問題発言に、言葉が返せない。
顔を真っ赤にしながら、彼を責めるように睨むものの、僕の頭の中では……
鳴瀬達の控え室だと云うのに、彰人に貫かれて感じまくってた自分の姿が浮かんじゃう訳で。
そこまで考えて、鳴瀬達に聞かれてしまったかも知れない事を思い出す。
「あ、彰人…鳴瀬達に、バレちゃったんじゃ…、」
唐突な僕の発言にも、彰人は焦る気配なんて全く無く。
それ所か、少し愉しそうな笑みを口元に浮かべている。
「その事なら、心配無い。私が部屋に入る前に、取引先へ向かわせたからな、」
「え…だ、だって…」
エッチの最中に、彰人が云った言葉が頭の中に浮かぶ。
外に居る鳴瀬達に聞かれちゃうって…あの時確かに、彰人が云ったのに。
呆然と相手を見つめる中で、彰人は少し悪戯っぽいような笑みを浮かべるし。
その顔がまた、魅力的だから……堪らない。
「聞かれている…と思うと、余計に興奮しただろう、」
彰人の図星な発言に、言葉の出ない唇が、パクパクと動く。
騙された、と思っても、彰人の口元に浮かんだ魅力的な笑みを見ていると、どうにも強く怒れない訳で。
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