the mating season…16
「…へ、ヘンタイ…っ」
何とか相手を責めるような言葉を出せたけれど、もうそれ以上の悪口なんて吐けない。
確かに彰人の云う通り、興奮しまくっちゃったのは事実で。
彼に言葉で虐められると、更に興奮しちゃったりして…本当に、どうしようも無い。
彰人一人を責められる立場でも無いのに、彼を精一杯睨む。
口では相手を責めながらも、頭の中ではつい、あの時の光景が頭に浮かんでしまう。
「スケベ、ヘンタイ…っ」
エッチの最中を思い出しながらも悪口を呟いていると、笑みを浮かべていた彰人の、整った唇が薄く開き……。
「なら、おまえは何だ?……ここをこんなにして、」
「ゃぁ…っあ、ぁ…ッ」
いつの間にか勃ち上がってしまった性器を、布越しにすりすりと撫でられてしまい、思わず声が上がる。
どうして彰人に撫でられただけで、こんなにも感じちゃうんだろう。
息を弾ませて、彰人を求めるように見上げるけれど、彼はあっさりと手を離してしまう。
さっきから何だか焦らされてばかりで、堪らない。
責めるように相手を睨むけれど、瞳は潤んじゃって、顔は赤らんでいるものだから……
きっと相手からすれば、誘っているようにしか見えないんだろうな。
何だか焦らされている事が悔しいから、次に彰人がいやらしい事をしようとしたら、頑張って抵抗しようと決める。
「葵、この時期のおまえは……閉じ込めてしまいたくなる、」
決意を固めていた僕の耳元で、いきなり彰人は低い声で囁き、僕の身体に腕を回して、きつく抱き締めてくれた。
唐突な行為に、と云うか……彰人の力強い抱き締めに、ドキドキしてしまう。
やっぱり彰人は、僕の発情期を知っていたみたいだ。
彼に抱き締めて貰える感覚が心地好くて、彼の言葉が嬉しくて……
ついうっとりしながら、ぼんやりとそう考える。
それに、彰人が大好きで仕方ない僕としては、彼に閉じ込められるのすら大歓迎だもの。
「いいよ、僕…彰人になら、何されてもいいもん…」
彰人になら、殺されたって構わない。
それぐらいに彼が好きだ。
……流石に、嫌われたり捨てられたりは、嫌だけど。
「何をされても…か。……おまえにそう云って貰えると、堪らないよ」
機嫌好さそうに囁く彰人の顔をまじまじと見つめて、僕は驚きで目を丸くしてしまう。
それって、それって……。
「他の人に同じことを云われても、何も感じないってこと?」
「…何を今更。当然だろう、」
――――――どうしよう。
嬉しくて嬉しくて、頭が変になりそうだ。
幸せで胸が熱くなるのを感じていると、彰人は急に僕のシャツの釦へと手を掛けて来た。
「え、な…なに?」
いきなり釦を外して前を開けられ、服を脱がされ始めて、つい焦った声を出す。
気のせいか、さっきまで甘い雰囲気だった室内は、怪しいものに変わり始めている。
「忘れる所だったが……身体中、汗を掻いていただろう?拭いてやる、」
彰人は形の良い、綺麗な唇に怪しい笑みを浮かべてそんな言葉を吐き、
露わになった素肌をゆっくりと指先でなぞり上げて来た。
その感触だけで、欲情してしまう僕は、手遅れなのかも知れない。
「ちょ…ちょっと待って!し、しなくていいからっ」
鳴瀬の媚薬効果は消えたけれど、僕はまだ発情期の真っ只中なんだ。
拭く、と云う行為ですら……彰人がしてくれるものだから多分、感じてしまうに決まっている。
それに、次に彰人がいやらしい事をしようとしたら頑張って抵抗しようって、さっき自分で決めたばかりだもの。
「大人しくしていなさい、」
「ま、待って…ほんと、しなくていいって。あ、そうだ!ほら、バスルームっ」
そこで汗を洗い流せば良い事でしょ、と告げる僕には構わず、彰人は口元に鬼畜な笑みを浮かべた。
「私になら何をされても…いい筈だろう?」
あうぅ…卑怯だ。
自分の発した言葉を少し後悔していると、彰人の綺麗な指が胸の突起を摘んだ。
「んぁ…ッ」
先程とは違って、直に触れる感触が、すっごく気持ち好い。
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