溺れる小鳥…10

「凪君……隠さないで下さい、」
 凪の感じている表情が見えなくなった樋口は、やや不満そうな声色で声を掛ける。
 それでも右手の動きは止まらず、更に左手で袋も緩やかに揉み込んでやった。
「ゃあ…っ、顔…変だから…はぁ…んんっ、ダメ、」
 快感が強過ぎるのか、既に理性が飛び始めている凪は、樋口がくれる快感に酔っている
 淫らな表情を見られたく無く、弱々しく首を振って拒否する。
 だがその言動は余計に樋口を煽るだけだと云う事に、凪は全く気付いていない。
「ナギ、」
 少し低めの通る声で凪を呼び、彼の両手を戒めているネクタイを左手で軽く引っ張り、手を顔の上から退かせる。
 羞恥で嫌がる凪に顔を近付け、樋口は満足そうな笑みを浮かべた。

「全然、変じゃ有りません。………ナギ、可愛くてたまらねぇよ、」
「ん…ぅん…ぁっ」
 愛おしむように凪の顔中へキスを繰り返しながら、凪の小ぶりな性器を、扱く速度を上げてゆく。
「あっぁ、あ…ッ!だ、だめ…、もう…ッ」
「もう、達きそうですか?」
 放った問いに何度も頷く凪を見て、樋口は満足そうに笑うものの、手の動きは緩やかなものに変えてしまう。
「樋口さ…ど、して…っ」
「本当に手だけで、達かされたんですか?もっと他に……有る筈、だろう?」
 不敵に笑いながら、囁くように低い声で尋ねる。
 目を細め、ゆっくりと舌なめずりした樋口の姿を目にし、凪の背筋がゾクリと震えた。
「く、……口で、して…」
 今にも消え入りそうな弱々しい声で凪が懇願すると、樋口は微笑み、ネクタイを掴んでいた手を離す。
 まるでいい子だと褒めるように凪の頭を優しく撫で、直ぐに身体を下方へずらして股間部へと顔を埋めた。
 先端から蜜を溢れさせ、ヒクついているそれを、樋口は躊躇いも無く咥え込む。
 興奮が冷める間も与えず、深くまで咥え込み、舌を絡めてきつく引き抜いた。
 それを何回か繰り返されると、焦らされていた分も有り、凪は直ぐに絶頂へと追い上げられる。

「んぁっ、や…ぁ、ぁああっ」
 甘く掠れた声を上げ、樋口の口腔へと全てを放ち、凪の身体はビクビクと痙攣した。
 普段より少しばかり量が多い事に気付き、この三日間、
 一人で処理もしなかったのだと理解した樋口は、喉を鳴らして飲み下す。
 残滴すらも残すまいと、尿道口に残っていた液体までも吸い上げ、犬のように何度か先端を舐め上げた。

「あっ…ぁっあ、ん…ッ、……め、だめ…ッ」
 一度達して敏感になった身体は、少しの刺激でも、ズキン…と、甘い疼きが走ってしまう。
 弱々しく首を振っている凪を上目遣いに見つめ、樋口は自分の指を、凪の蕾へと近付けた。
 凪の先走りは既に陰部を伝い、蕾の方まで流れ落ちている。
 その淫靡さに劣情をそそられながら、伝っていた先走りを指に絡め、塗りつけるように蕾の周囲をなぞる。
 そうしながらも口愛撫を続け、知り尽くしているかのように
 窪みを舌先でなぞり、裏筋を舐め、凪の弱い部分を的確に攻め上げた。

「ゃ、ゃ…っ、樋口さ…っ、取って、コレ…取って…ッ」
 クプッと中指を蕾に埋没させると、急に凪は手首を拘束しているものを外すよう、懇願して来た。
 拘束がキツ過ぎたのかと考え、樋口は指を軽く動かし、浅い抽挿を繰り返しながら凪の性器から口を離した。
「どうしました?手首、痛みますか、」
「ふ…っ、ん…ち、違くて…ぁっ」
 中指をゆっくりと奥まで沈めると、凪の爪先がビクリと跳ねる。
 凪が痛みを感じて居ない事に安堵するものの、何故拘束を解いて欲しいのかが気になる。
 慣らすようにじっくりと奥を探り、続いて慎重に二本目の指も侵入させながら、口を開く。
「痛くないなら、何です?」
「んっ、ん…ッ!」
 クチュクチュと卑猥な水音を奏でながら、指の抽挿を緩やかに繰り返すと、凪は鼻に掛かったような甘い声を漏らす。
 理由を告げるのが恥ずかしいのか、凪は中々云おうとしない。
「ナギ……云わねぇなら、ずっとそのままだぜ。いいのか、」
 低いながらも穏やかな声音で話し掛けられ、凪の身体にゾクゾクと興奮の寒気が走る。
 凪は小さくかぶりを振り、縋り付くように樋口を呼ぶが、相手は解こうとはしてくれない。
「ひ…ぁあっ!」
 上目遣いで凪を見据えながら、樋口は指を折り曲げ、不意に凪の泣き所を指で突き上げた。
 目の眩むような快感に、凪の肢体がビクリと硬直する。
 樋口の触れている箇所がもどかしい程に疼き、もっと刺激して欲しいと云うように凪は腰をくねらせ、甘い声を上げ続けた。

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