溺れる小鳥…14
もう一度始めから慣らすつもりの樋口は、指を奥まで侵入させずに、焦らず、緩やかに指を動かし始めた。
「や…っ、やだ、それ…っ」
嫌がりながら頭を振ると、樋口は理解したように笑い、指を二本に増やして奥まで侵入させた。
ジェルのお陰で指はすんなりと入り、凪は痛みも感じずに小さな鳴き声を漏らす。
だが一度慣らされた所為か、指を増やされて奥まで侵入されても、凪は物足りなさそうに首を振る。
「も…もう、して……樋口さん、して…、」
切羽詰ったような凪の声を耳にすると、樋口は小さな舌打ちを零し、何も答えずに指を抜いた。
身体を離して、身に纏っていたスーツを全て脱ぎ捨て、再度凪へと覆い被さる。
膝を掴み、足を割り開くとその間へ身体を進め、入口へと熱い塊を押し当てた。
「凪君、力…抜いて下さい。息を吐いて…」
囁くと、凪はその通りに息を吐き、少し身体は強張っては居るが、何とか力を抜く。
それと同時に、熱い塊がグッと凪の内部へ入り込んで来る。
一番太い亀頭部分を挿入する事に、毎回ながら、樋口は少し苦戦していた。
「んっ…ん、…ふっ」
樋口の首にしがみつきながら、凪は圧迫感に耐えるように眉根を寄せ、苦しげな声を漏らす。
久し振りだからなのか、以前挿入された時より、樋口の雄が大きく感じる。
粘膜を押し上げるようにして、徐々に奥へと侵入して来る
樋口自身をハッキリと感じ、凪は堪らなそうに首を振った。
「樋口さ…っ、ゃっ、や…っ」
泣きそうな、切羽詰ったような声で訴える凪の声を聞き、樋口は進めていた腰の動きをピタリと止める。
凪の中が狭すぎる所為で、樋口は少し苦しげに眉を顰めながら、口を開く。
「どうしました、凪君…」
中途半端な位置で挿入を止めている為に辛く、けれど凪の言葉を聞くまでは動こうとはせず。
「ゃあっ、も…っもう、ゃ…」
興奮が強すぎるのか、それとも久し振りだからか。
凪は、樋口がまだ奥まで侵入していないにも関わらず、限界間際に上り詰めている。
頭を振り、泣きそうな声を出す凪を見下ろし、樋口はそれを理解したように微笑んだ。
蜜を溢れさせている小ぶりな性器へと手を伸ばし、包み込むようにやんわりと握る。
「……構いませんよ、ほら…」
強弱を付けて凪自身を扱き上げながら、再度腰を奥へと進める。
ゆっくりと深くへ押し入って来る逞しい雄の感触と、
強く扱き始めて来た樋口の手の動きに、凪はもう何も考えられない。
切なげな声をより一層高くし、直ぐに甲高い声を上げ、身体を痙攣させながら吐精する。
それと同時に、樋口は一気に奥まで侵入し、太い自身の先端を最奥へグリグリと押し付けた。
「ひぅ…うッ、ぁああッ…」
休む間も無い快感の継続に、凪の身体はビクビクと跳ね、堪らなそうに頭を振る。
その姿を気に入ったのか、樋口は腰を引かずに暫くの間、奥だけを苛み続けた。
「奥が好いんですか?ナギ…、」
「ぅうんっ、は…ぁっ、あぁ…あぅッ」
爪先を浮かし、肢体を跳ねるように震わせた凪は樋口の問いには答えられず、白い喉元を仰け反らせ、目を見開く。
喉仏が目立たないその首筋へ吸い付くようなキスを繰り返してから、樋口はやっと腰を引いた。
ゆっくりと自身を抜き差しし、慎重に浅く緩い抽挿を繰り返す。
「凪君…以前した時より、快感が強いようですが……やはり気分が違うと、以前よりも気持ち好いですか、」
「んっ、はぁ…ぁ、は…ッ」
徐々に抽挿の速度を上げられ、理性が飛びかけていた凪は掛けられた言葉に、何度も頷いて見せた。
やはり、想いが通じ合った相手とのセックスの方が、以前の何倍も気持ち好い。
現に、挿入途中で達してしまう事など、今まで無かった。
――――――待ち望んだ、愛しい人との繋がり。
凪は何もかもが溶けてしまいそうな程の、甘い快楽と幸福感に、溺れそうになる。
「よ…しきさ、ぁっ、あ…んぅ、し……きさ…っ、」
夢中で樋口にしがみつき、頬を熱くさせながら名を呼び始めた凪を、樋口は食い入るように眺める。
柔らかい微笑みを浮かべながら、愛しげに凪を見つめて、その細い腰へと片腕を回した。
「凪君、今日は少し…いつもと違った体位で、してみましょうか、」
「んっ…はぁ、は…ん、……たい、い?」
抽挿の速度を緩めて不意に言葉を掛けられ、凪は不思議そうに相手を見上げる。
息を弾ませながら問う凪に、樋口は完璧に腰の動きを止め、目を細く眇めて見せた。
「ええ、きっと…凪君も気に入ってくれると、思うんですけどね、」
樋口の言葉を聞いては居るが、快感で思考が上手く働かない。
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