溺れる小鳥…15
もう何でもいいから、先程のような、溺れそうな幸福感と快楽を味わいたい。
心底愛しい人がくれるそれに、酔ってしまいたい。
そう考えた凪は、樋口の言葉を深く考えないまま、コクコクと頷いてしまった。
それを目にした樋口は、一度雄を引き抜き、片腕で凪の身体を抱き起こす。
これから一体何をされるのか、理解出来ないままの凪を抱え、自分の膝上へ乗せる。
向かい合うようにして座ると、凪は余計に何をされるのか理解出来ない。
不思議そうにこちらを見上げている凪を見て薄く笑い、樋口は片腕で凪の腰を抱え上げた。
「ぇ、な…なに、樋口さん…、」
「大丈夫ですから…」
急な浮遊感に狼狽える凪を優しい声色で宥め、そそり立った凶器のような
赤黒いソレを、ずれないよう片手で固定し、その上へと凪の腰を下ろし始めた。
だが、太い亀頭部分の挿入に、少し手間取る。
グイグイと腰を押し付けるような行動を繰り返して、やっと先が少し埋まった。
「ぁっ、…う、嘘…っ」
まさかこんな体勢で挿入されるとは思いも寄らず、無意識の内に少し抵抗するように
身を捩ってしまうが、樋口の手は凪の腰をしっかりと押さえつけて離さない。
「凪君、逃げようとしても、無駄ですよ……もう、抑え切れません」
樋口は低い声でそう囁き、まるで獰猛な獣のようにギラついた眼差しを、凪へと向けた。
しかしそんな樋口を前にして凪は怯えるよりも、その野性的な迫力に見惚れてしまい、
無意識の内に自ら樋口の唇へと啄ばむようなキスをした。
目を瞑りながら、何度か小分けにしてキスを繰り返して来る、
珍しく積極的な凪の姿に劣情を煽られ、樋口は凪の唇を舌先で舐めてきつく吸い始めた。
「…ふ…ぅんっ…ん!」
太い亀頭部分が全て埋まると、後はもう重力に従うように、凪の腰が沈まって行く。
普段より深く入り込んで来る感触に驚きながらも、凪は苦しげな声を漏らした。
自分の体重が掛かっている所為で、樋口の雄が強く押し付けられるように、奥へと当たる。
「んんぅ…こ、恐い…ッ」
どうにかなってしまいそうな、何とも云えない初めての感覚に戸惑い、
凪は唇を離すと、つい怯えを言葉に出してしまう。
だが、凪が嫌がれば直ぐにでも止める筈の樋口は、いつもと違って止めようとしない。
「凪君…、」
「ゃ、や…ぁっ」
止めずに、ゆっくりと下から突き上げ始めると、凪は嫌がるようにかぶりを振った。
両手を樋口の肩上に乗せ、縋り付くように肩を掴むが、その手は震えている。
それに気付いた樋口は、凪の汗ばんでいる額へと、あやすようなキスを繰り返した。
「恐い、の…他には?」
緩やかに突き上げながら、樋口が唐突な質問を放つ。
涙に濡れた瞳で樋口を見上げた凪は、息を弾ませながら、唇を小さく動かした。
「ん…、あ…熱い、」
「それから?」
間を置く事無く尋ねられ、凪は既に、考える余裕など無かった。
「く、苦しい……大きい…大きいよぉ…っ」
圧迫感に苛まれ、涙ながらに今得ている感覚を素直に伝えると、樋口は満足そうに微笑んだ。
そして、まるでちゃんと答えられた褒美だと云うように、凪の唇へと吸い付くようなキスをする。
「俺も、すごく興奮しているんですよ……こいつも、大喜びしている、」
「んあぁ…ッ!」
こいつとは何だろうかと訝った凪を樋口は直ぐに、二、三度だけ下から強く突き上げた。
それによって高い声を上げながらも、何を示すのか理解した凪は、恥ずかしそうに目元を赤らめる。
凪の恐怖が若干和らぎ始めたのを察した上で、樋口は徐々に腰の動きを大胆なものに変えて行った。
奥を突き上げると同時に凪の腰を掴み、激しく揺さぶってやる。
更に速度を上げると、グチュグチュと結合部から漏れる卑猥な水音がより一層大きくなり、互いの興奮をかき立てた。
「熱くて、苦しくて…他には?」
「あっあぁ…ッん、ン…っ」
快感が強まり始めた凪の耳元で、軽く吐息を吹き掛け、樋口が問う。
ビクリと身体を跳ねさせ、無意識の内に自らも腰を揺らしながら、凪は目を瞑った。
「……い、いい……気持ち、好いよぅ……っ」
素直な言葉を漏らす凪を見て、樋口は堪らずに凪の耳朶へと軽く咬みつく。
舌で舐め上げ、唇で挟み込むと凪は更に快感が強まったのか、樋口の肩へと無意識に強く爪を立てた。
肩に爪を立てられても、樋口は全く不快には感じず、むしろ愛しげに凪を見つめている。
「ナギ……もっとしがみ付け…」
掴んでいた凪の腰を手前に引き寄せ、更に身体を密着させながら、樋口が甘く低い声色で囁く。
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