溺れる小鳥…16
身体が更に密着した所為で、凪の小ぶりな性器が、樋口の鍛え上げられた腹部で何度も擦れる。
「ぁっ、ゃあ…だ、め…っ…そんなに、したら…ッ」
樋口の雄々しい塊が出入りする度に内壁が押し上げられ、最感部分を熱く逞しい雄が、何度も激しく擦り上げる。
きつく樋口にしがみつき、快感の涙を零しながら凪は狂いそうな程の快楽と、
何もかもが溶け出してしまいそうな程の甘い悦楽に包まれた。
こんなに容赦の無い、強過ぎる快楽を、今まで樋口がくれた事は無い。
狂ってしまいそうで
死んでしまいそうで……
――――――深く、溺れてしまいそうだった。
「やだっ、ゃ…ッよしき、さ…、変に、なる…っ」
「なっちまえよ……ナギ。変になって、溺れちまえ……」
耳元で樋口に、熱っぽい声で甘く囁かれると、凪は激しい快楽に翻弄され、身体を震わせて大きく背を反らした。
「はぁ、あっ、芳樹さ、よ…しき…さッ、あっぁ、あ――ッ」
目の前が真っ白になるのを感じながら、広い鳥籠の中で
凪は樋口の言葉通り………強烈な快楽に、溺れていった。
「ん…樋口、さん…?」
意識を取り戻し、ゆっくりと瞼を開けた凪の目に、こちらを見下ろしている樋口の顔が映る。
心配そうな、困ったような、何処と無く頼り無い表情を浮かべていた樋口は、安堵したように息を吐いた。
凪の身体を丁寧に拭いていた濡れタオルを、サイドテーブルへと置き、手を伸ばして凪の頭を優しく撫でる。
「凪君、気が付きましたか…」
ほっとしたような樋口の声を耳にするが、頭を撫でられる感触に、凪は半ばうっとりとしてしまう。
見ると樋口は、上体だけ何も纏っておらず、屈強で筋肉質な体躯が、凪の目に映る。
もう何度も見た事の有る、硬そうな締まったその身体の背には、
右の肩甲骨から左腰に掛けて色鮮やかな真紅の鳳凰の姿が、斜めに描かれている。
鮮やかな赤色は樋口にとても良く似合う色だと、凪は意識を取り戻したばかりの為か、ぼんやりとした頭で考えていた。
だが徐々に思考がハッキリとし始めると、自分だけがまだ裸である事に気付き、
あれから休む間も貰えずに何度も樋口に貫かれた事を、やっと思い出す。
今まで樋口が休む暇も与えずに何度も行為を続けた事は無かった為、凪は疲労感と軽い虚脱感に包まれていた。
暫くの間は初めての座位で責め立てられ、やがていつも通りの体勢に戻されて、
何度も達かされた事を思い出した凪は、少しだけ赤面してしまう。
何度目かの高みに上り詰めた後の記憶が、完璧に途絶えている為、自分が気絶した事も理解出来た。
「凪君…すみません、酷くしてしまって。……何処か辛い所は、有りますか?」
勝手に気絶してしまった事に対し、謝罪の言葉を掛けようとした凪より先に、樋口が申し訳無さそうに謝罪を零した。
辛い所が有るかと訊かれれば、身体中のあちこちが少し痛く、特に下肢に鈍い痛みを感じた。
だが凪は樋口を責める事など無く、少し恥ずかしそうに唇を開く。
「あ、あの…僕、……き、気持ち好かった、から…、」
自分の乱れた様を思い出し、そんな自分をはしたないと考えながらも、樋口へ向けて素直な言葉を漏らす。
自分も悦がっていたのだから、樋口は酷い事などしていないと、凪は伝えたかった。
そんな凪の言葉に、簡単に欲を煽られた樋口は、心中で溜め息を漏らす。
あれだけ何度も凪を味わい、満足したのにも関わらず、
十代のガキのようにまだ相手を求めてしまう自分に、樋口はいささか呆れていた。
「それは良かった。凪君が気持ち好ければ…俺はそれだけで、幸せですから」
何とか自分の欲を抑えながら言葉を掛けるが、凪はその言葉を耳にすると、瞳に不安の色を浮かべてしまう。
それに気付いた樋口が、どうしたのかと尋ねるよりも早く、凪は唇を動かした。
「ひ、樋口さん…あの、樋口さんは…気持ち、好かった?」
唐突なその質問に樋口はいささか驚くものの、直ぐに頷き、にこやかに微笑んで見せる。
「凪君が相手なんですから、当然ですよ」
甘く低い声で囁かれ、凪は鼓動が速まるのを感じながらも、ほっとしたように息を吐いた。
自分でも、樋口を満足させる事が出来たのだと考え、それだけで凪は、幸福感に満たされていた。
思わず嬉しそうに微笑んでしまった凪から、樋口は中々目が離せない。
凪が笑うだけで、強い幸せを感じてしまう樋口は、今の自分には
武闘派の面影が全く無いと考え、胸中でつい自嘲してしまう。
「…そろそろ、服を着ましょうか。いつまでもそんな格好では、風邪を引いてしまいます、」
凪が気絶していた最中に用意した服を、片手に持ちながら声を掛ける。
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